相続放棄
相続欠格事由とは?手続きや事例などをわかりやすく解説!

目次
相続手続きには多くの法律が関わっており、その中でも「相続欠格」は、相続人の行動によって法的に相続権を失うという厳しい制度です。被相続人との関係性や生前の事情によっては、想定外のトラブルが発生することもあります。
この記事では、相続欠格とは何か、その適用事例、必要な手続き、さらには代襲相続や遺留分との関係などについて、初めての方にもわかりやすく解説します。
相続欠格事由とは?基本の意味を解説
相続欠格とは、特定の重大な非行を行った相続人が、法律により当然に相続権を失うことを指します。民法第891条に規定されており、故意による被相続人の殺害や遺言書の不正操作などが該当します。
これは、法の秩序と道徳に反する行為に対し、社会的な制裁として相続権を剥奪する仕組みです。似た制度として「相続廃除」がありますが、欠格とは性質や適用方法が異なります。
相続欠格は一定の行為を行えば法律上当然に相続権を失うのに対し、相続廃除は被相続人の意思に基づいて裁判所が判断する制度です。
相続欠格と相続廃除の違い
- 相続欠格:法律に定められた不正行為をした時点で、当然に相続権を失う。
- 相続廃除:被相続人が「将来の相続を認めたくない」と考えたときに、家庭裁判所へ請求し、その判断により相続権を失わせる。
相続欠格の具体的な5つの事由
民法891条では、相続欠格となる行為を具体的に定めています。以下の5つが代表的な欠格事由です。
被相続人または他の相続人を故意に殺害・殺人未遂
被相続人を故意に殺害、あるいは殺そうとした場合、その相続人は法律上当然に相続権を失います。未遂であっても欠格事由に該当し、極めて重大な非行とみなされます。
殺人が成立しなかった場合でも、故意による行為であれば相続欠格が適用されるため、たとえば毒物の混入や事故に見せかけた殺害計画なども対象となる可能性があります。
被相続人以外の相続人に対しても同様に故意の殺害行為があった場合は、その相続人も欠格とされるため、家族間のトラブルが深刻化した際には注意が必要です。欠格となった場合、相続財産の取得はできず、他の相続人への影響も大きくなります。
被相続人が殺害されたことを知っていながら、これを告発または告訴しなかった者
被相続人が殺害された事実を知りながら、それを警察や検察などの公的機関に通報せず、黙認してしまった者も、相続欠格の対象となります。これは、殺人という重大な犯罪に対して見て見ぬふりをする行為が、倫理的に著しく問題があるとされるためです。
ただし、この欠格事由には例外があります。たとえば、犯人が自分の親や子どもなど親族である場合や、報復などの恐れから告発できなかったなどのやむを得ない事情がある場合には、欠格に該当しないこともあります。
詐欺や脅迫により遺言を作成・取消させ遺言を妨げる
被相続人に対して嘘の情報を吹き込み意図的に誤解させたり、暴言や精神的圧力を加えることで、遺言書を自分に有利なように妨げた場合、詐欺や脅迫とみなされ、相続欠格事由に該当します。
このような行為は、被相続人の真意に基づく自由な意思表示を妨げるため、重大な違法行為です。実際の裁判では、会話の録音や証人の証言、被相続人の健康状態に関する医師の診断書などが証拠として重視されます。
被相続人を脅して遺言を書かせ、遺言を変更させる
被相続人を脅して、遺言を変更させる行為も相続欠格にあたります。
たとえば「遺言に名前を入れないと絶縁する」などの精神的な圧力や、経済的に依存させたうえでの支配的な言動などがあれば、外見上は自発的に書かれた遺言でも、裏に脅しがあったとされる可能性があります。
家族間でのやり取りが記録に残っている場合や、他の相続人から証言があれば、欠格として認められる可能性が高まります。
遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した
遺言書の内容を意図的に改ざんしたり、他の相続人に見せず隠したりする行為は、相続欠格に該当します。この行為は、相続人の間における公平性を著しく損ない、他の相続人の正当な権利を侵害するものとして、法律で厳しく制限されています。
たとえば、遺言書に記載された内容を書き換えたり、署名や日付を勝手に変更したりすることは「変造」にあたり、意図的に破り捨てたり紛失したふりをして保管しないことは「破棄」「隠匿」にあたります。
相続財産の配分が変わる可能性があるため、非常に重大な違反とされています。実際には、相続発生後に特定の相続人が「遺言書が見つからない」と主張していたが、後にその人物の部屋から遺言書が見つかった、という事例もあります。
相続欠格になるとどうなる?
相続欠格が適用されると、その人は法的に相続人としての地位を完全に失い、遺産に関する一切の権利や関与が認められなくなります。具体的にどのようなことができなくなるかを確認しましょう。
相続権の完全喪失と分割協議への不参加
相続欠格に該当した相続人は、遺産分割協議に加わることはできなくなります。法定相続人としての地位を失うため、遺産の受け取り、遺留分の請求、財産の分配に関する意見表明など、すべての行為が認められません。
たとえば、他の相続人と同等の取り分を主張したり、遺言に異議を唱えたりする権利も失われます。また、分割協議の場において、欠格者が相続人として名を連ねていた場合でも、その立場は法的に無効とみなされ、遺産分割協議書に署名を求める必要もありません。
欠格者の子による代襲相続が可能
相続欠格が適用された相続人に子ども(直系卑属)がいる場合、その子どもは欠格者に代わって相続権を取得することができます。これを「代襲相続」と呼び、欠格者の行為によって相続欠格の子どもまで権利を失うことがないようにする制度です。
代襲相続人は、法定相続人として扱われるため、分割協議に参加することができ、欠格者が本来受け取るはずだった財産を相続することが可能です。
ただし、代襲相続を行うためには、その子が相続開始時点で生存していることが必要であります。
相続欠格の手続きと証明方法
相続欠格は、民法第891条に該当する行為があれば当然に相続権を失います。したがって、すべての状況において、相続欠格証明書を作成する必要はありません。
しかし、相続欠格であることは戸籍上には記載されないため、相続欠格証明書が必要になる場合があります。相続欠格証明書が必要になるケースは、以下のようなケースです。
家庭裁判所での判断が必要なケース
遺言書の偽造や隠匿など、欠格に該当する行為が明確でない場合、相続人同士の争いが生じることがあります。このようなときは、相続欠格証明書が必要になる場合があります。
・「相続欠格証明書」の具体的な記載事項
相続欠格者本人が作成する「相続欠格証明書」には、以下の要素を明確に記載する必要があります :
作成日と住所
氏名(実印による捺印)
「被相続人の氏名」「死亡年月日」「民法891条の該当号(例:第2号)」などの理由で欠格に該当するかの条項明示
宣誓文:「自らが該当者であることに相違ないことを証明する」旨の明示
相続でのトラブル回避のポイント
相続欠格は、重大な非行によって発生する法的措置ですが、日頃の備えや適切な対応によって回避できる可能性もあります。家族間の関係性や相続への理解不足が原因で、不要なトラブルを招くケースも少なくありません。
ここでは、相続欠格という最悪の事態を防ぐために、事前にできる具体的な対策や注意点をご紹介します。
家族間での早めの情報共有
「自分の財産はどうするのか」「どのような遺言を残すのか」など、家族との話し合いを日常的に持つことが、相続トラブル防止の第一歩です。
相続について話し合うことは難しいと感じる方もいますが、家族の考えや希望を共有しておくことで、誤解や不安が減り、相続時の争いを回避しやすくなります。定期的に家族会議を開いたり、財産目録の下書きを用意しておくのが望ましいです。
公正証書遺言の活用
自筆遺言は偽造・変造されやすく、欠格トラブルの火種となることもあります。内容が曖昧であったり、署名や日付が不備で無効になるケースも多いため注意が必要です。
公正証書遺言であれば、第三者(公証人)が関与して作成され、原本は公証役場に保管されるため、信頼性が高く安心です。
相続人にとっても確認しやすく、相続時のトラブルを大幅に減らすことができます。生前に専門家と相談しながら、遺言書を整備しておくことをおすすめします。
不安がある相続人については「相続廃除」も検討
暴力や暴言、精神的虐待がある相続人に対しては、あらかじめ家庭裁判所に「相続廃除」の申立てをしておくことで、相続発生後の争いを防げる場合があります。
相続廃除は、被相続人の意思に基づいて行う法的な手続きであり、相続欠格のように自動的に適用されるものではありません。適切な証拠をそろえて裁判所に申し立てることで、相続権を制限することが可能です。
相続廃除を申し立てたからといって必ず認められるわけではなく、家庭裁判所の判断が必要になります。実際に廃除を検討する際は、弁護士や司法書士などの専門家と相談し、証拠の収集や申立書の作成などを適切に進めることが大切です。
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まとめ|相続欠格の正しい理解でトラブルを防ごう
相続欠格は、故意による非行が原因で相続権を失う非常に厳しい制度ですが、その存在は公平な相続を保つために不可欠です。
欠格事由に該当するかどうかは状況により判断が必要であり、判断を誤ると相続トラブルが深刻化する恐れがあります。相続を円滑に進めるには、事前の対話と適切な準備、そして専門家の助言が欠かせません。
不安がある方は、早めに司法書士や弁護士に相談することで、トラブルを未然に防ぐのが望ましいです。
この記事の著者
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一般社団法人士希の会が運営する「空き家相続サービス」では空き家を中心とした不動産の相続に関するコラムや解決事例を紹介しています。空き家になった不動産の利活用や売却もしっかりサポート!不動産相続の専門家を調べることができるので、ご自身に合った専門家を見つけることができます。
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