相続
相続全般の知識・手続き・相談
遺産相続とは?
目次
遺産相続人についての大事な知識
~相続人の範囲と順位、調べ方~
このコラムでは、遺産相続人について解説します。
誰が遺産相続人になるのか?
相続割合は?
どうやって遺産相続人を調べればよいのか?
といった疑問に、お答えします。
養子や外国人が関係するような、少し複雑な相続についても、解説します。
誰が相続人になるの?
亡くなった人のことを「被相続人」、財産を受け継ぐ人のことを「相続人」といいます。誰が相続人となるのでしょうか?その優先順位は?それを解説します。
基本形
相続人の基本形は、次の通りです。
- まず、配偶者(妻・夫)は必ず相続人になります。
- 配偶者に加え、故人に子、親、兄弟姉妹がいる場合は、その中で優先順位の高い資格者も相続人となります。
- 子、親、兄弟姉妹の間の優先順位は、子>親>兄弟姉妹です。(A>Bは、AがBに優先するという意味です)
とてもシンプルですね。
例えば、
- 故人に配偶者と子がいる場合は、配偶者と子だけが相続人となります。親や兄弟は相続人とはなりません。
- 故人の配偶者がすでに亡くなっていて、子がいる場合は、子だけが相続人となります。
- 故人の配偶者は生存しているけど、子はなく、父親が生きている場合は、配偶者と父親だけが相続人となります。兄弟姉妹は相続人とはなりません。
- 故人に、配偶者も子もなく、親も死亡している場合は、兄弟姉妹だけが相続人となります。兄弟姉妹もいない場合は、相続人がいないこととなります(相続人がいない場合は、原則的に財産は国庫に帰属することとなります)。
しかし、相続のすべてがこの基本形の通りとなるわけではありません。次からは、少し変則的な場合を見ていきましょう。
応用形① 配偶者、子、親、兄弟姉妹が故人より前に死亡している場合
この場合は、亡くなっている人に代わって相続する人がいるか探します(あるいは、いないことを確認します)。亡くなった人に代わって相続する人を、「代襲相続人」といいます。基本的なルールは以下の通りです。
- 配偶者が先に死亡している場合 → 配偶者は相続人ではなくなります。配偶者に代わって相続する人はいません。
- 子が先に死亡している場合 → 子に、さらにその子(孫)がいる場合は、その孫が子に代わって相続人となります。孫も死亡している場合は、さらにその子(ひ孫)が相続人となります。この連鎖が終わりなく続きます。死亡した子の配偶者は相続人とはなりません。
- 親が先に死亡している場合 → 親の親(祖父母)が生存している場合は、その祖父母が相続人となります。親も祖父母も死亡しているけど、さらにその親(曽祖父母)が生きているときは、その曽祖父母が相続人となります。子の場合と同じように、この連鎖も終わりなく続きます。
- 兄弟姉妹が先に死亡している場合 → 死亡した兄弟姉妹の子(甥姪)が相続人となります。しかし、その甥姪が死亡していたときは、それ以上先に進まず、相続人不存在となります(兄弟姉妹の場合は1世代しか進まない)。
少し複雑になりました。
けれども、基本形の枠組みは変わりません。基本形にこれをあてはめればよいです。
例えば、
- 故人に配偶者と子がいたが、配偶者も子も先に亡くなっている場合は、子の子(孫)がいるか確かめます。生存している孫がいる場合は、その孫だけが相続人となります。
- 一方、孫がいない場合や、いても死亡しているなどそれ以上先に進めないときは、子の次の順位の相続人、すなわち親を検討します。
- 親が死亡しているときも、子の場合と同じく、親に代わって相続する人がいないか探します。人間の寿命は120歳くらいが限度と言われているので、誕生日から数えると120歳前後になる世代まで遡って確認すれば十分です。親を代襲相続する人がいない場合は、親の次の順位の相続人、すなわち兄弟姉妹を検討します。
- 兄弟姉妹もいない場合は、相続人不存在となります。
ちなみに、注意点としては、代襲相続人が子、親、兄弟姉妹に代わって相続するのは、該当の人が被相続人より「前」に死亡していた場合です。被相続人より「後」に死亡した場合は、いったん取得した相続権についてさらに相続が生じたと考えます。この場合は独立した二つの相続が起きたと考えるわけです。
応用形② 離婚した配偶者がいる場合
離婚した配偶者は、相続人とはなりません。
相続開始時に故人の配偶者であった者だけが相続人となります。
そういう意味で、いわゆる「内縁の配偶者」は相続人としての資格はないこととなります。内縁の配偶者に財産を残したい時は、遺言や信託、生前贈与などを使います。
応用形③ 故人に養子がいた場合
養子も、「子」として相続人となります。
ただし、相続開始時までに離縁した養子は相続人となりません。
(ここからちょっと難しい話)
養子で問題となるのは、故人に先立って養子が亡くなっていたときです。その場合、1-2で解説した通り、その養子に代わって相続する養子の子を探しますが、養子縁組前に生まれた子か養子縁組後に生まれた子かで、代襲相続人となるかの結論が変わります。原則的に、養子縁組前に生まれた子は代襲相続人とはならず、養子縁組後に生まれた子は代襲相続人となります。
ただし、実務的には、養子縁組前に生まれた子でも、故人と血のつながりのある者の場合は代襲相続人になれるとされる場合があります。
応用形④ 相続人の中に外国人がいる場合
故人が日本人であれば、相続人の中に外国人がいても、ここまで説明したことに何の変更もありません。
一方、被相続人が外国人であった場合は、その被相続人の本国法に従います。
もっとも、その被相続人の本国法にて、相続は被相続人が死亡した国の法律で行うとされている場合などで、結果的に日本の法律で相続することもあります。
相続割合は?
相続人の範囲が分かったら、次に、各相続人の相続分を考えましょう。
まず大事なことは、遺言書が残されているか否かを調べることです。
意外に思われるかもしれませんが、被相続人は、遺言書の中で各相続人の相続分を指定することができます。
したがって、遺言書の中で各相続人の相続分が指定されていた場合は、その割合に従います。例えば、ある相続人に相続分全部を指定し、他の相続人には相続分を指定しない内容の遺言も有効です。
遺言が無い場合は、民法に規定されている相続分が適用されます。民法規定の相続分は以下の通りです。
-
配偶者と子が相続人となる場合は、配偶者1/2、子1/2です。子が複数いる場合は、子の相続分1/2を各人で均分します。
- 配偶者と親が相続人となる場合は、配偶者2/3、親1/3です。親が複数いる場合は、親の相続分親1/3を各人で均分します。
- 配偶者と兄弟姉妹が相続人となる場合は、配偶者3/4、兄弟姉妹1/4です。兄弟姉妹が複数いる場合は、兄弟姉妹の相続分1/4を各人で均分します。
*ただし、兄弟姉妹の中で、被相続人と同じ両親を持った兄弟姉妹(全血兄弟)と両親の片方だけ同じ兄弟姉妹(半血兄弟)が分かれている場合は、全血兄弟の相続分が半血兄弟の相続分の2倍となるよう案分します。
コラムの中のコラム1(ちょい難)
ここまで、相続分について解説しましたが、実のところ、実際の相続手続では、相続分はあまり重要ではありません。
故人のどの財産を誰が実際に受け継ぐかは、相続人全員の話合い(これを遺産分割協議といいます)で決めることができるとされており、この話合いの結論は、相続分に拘束されないからです。話合い次第で、相続分が1/2しかない相続人が、相続財産の全部を受け継ぐということもできます。
相続分とは、この遺産分割協議が成立するまでの間の、相続財産についての想像上の共有割合であるにすぎません。
詳しく解説すると、相続財産一切は、相続開始後直ちに相続分の割合によって相続人全員の共有状態になるとされますが、共有状態は法律的に不安定で不便です。そこで、相続人はその共有状態を解消するための話合いができるとされています。これが遺産分割協議です。遺産分割協議では、相続財産を構成する一つ一つの財産について、それを誰のものにするか(あるいはどのような共有状態に移行させるか)、決めます。この話合いは、共有状態の解消による法律関係の簡素化や相続人の利便性実現が本来の趣旨なので、相続分には拘束されません。したがって結局は遺産分割協議次第で、いかような相続も実現できるのです。
相続手続きが、①相続分による共有状態→②相続人による遺産分割協議という2ステップの権利変動で最終的に着地するということは、知っておいていただきたい点です。
なお、そのほか相続分が重要になる場面としては、遺産分割協議が調わない場合に、相続人は家庭裁判所に遺産分割の審判を求めることができますが、その審判の判断基準として相続分は機能します。
コラムの中のコラム2
さきほど、相続割合を解説する箇所で、故人は、遺言書で各相続人の相続分を指定できると書きました。また他方で、「コラムの中のコラム1」では、相続人は遺産分割協議によって、相続分に拘束されず、自分たちの望むような相続を実現できると書きました。
では、故人は、結局、自分の望む結果を指定しておくことはできないのでしょうか?そうではありません。
「コラムの中のコラム1」では、相続手続きが、①相続分による共有状態→②相続人による遺産分割協議という2ステップの権利変動で最終的に着地するという点を指摘しました。
実は、故人は、遺言書で、1ステップ目の相続分を指定することができるだけでなく、2ステップ目の遺産分割の内容も指定することができます。
遺言書で遺産分割の内容が指定してあると、遺産分割はもう済んだ扱いとなるため、相続手続きの枠内で、相続人が自分たちの裁量を働かせる余地は無くなります。
実務上、相続についての大半の遺言書は、この遺産分割の指定となっております。
では、そうすると今度は、遺言書で理不尽な扱いを受けた相続人の権利保護が問題となりますが、そういう相続人には「遺留分」という最低限の取り分が保障されております。
遺産相続人を調べる方法は?
では実際に、相続人を調べる方法を検討しましょう。
相続人は、戸籍を使って調べます。
戸籍は、本籍地の市区町村役場で取得します。多くの人の場合で、住所地(住民票のある場所)と本籍地は異なるので注意が必要です。
では実際に、どのような戸籍を取得する必要があるのか、など具体的な解説をしていきましょう。
どういった戸籍が必要なの?
まず、戸籍を取得して相続人を確定するためには、次の3つの事実を確認する必要があるとされています。
- 被相続人が死亡したこと
- ほかの相続人がいないこと
- 相続人が相続開始当時生存していたこと
まず①については、当然ですね。被相続人の死亡が確認できないと相続が開始したことが分かりません。
ちなみに、死亡届を役所に提出すると、役所が自動的に、戸籍に死亡した旨記載します。死亡届を提出した役所と本籍地の役所が違う場合でもそうです。
この①の事実を証明するためには、被相続人についての死亡当時の戸籍を取得します。この戸籍によって、死亡の事実と、死亡当時配偶者がいたかどうかが分かります。
次に、②については、まず、故人の出生から死亡までの戸籍を取得します。
一人の人間が属する戸籍は、一生のうちに、転籍したり、婚姻したりすることで、変わります。そういった、故人が属してきた戸籍を、出生から死亡まで集めます。
出生から死亡までの戸籍によって分かることは、その人に子供がいるかどうか、という点です。
子供がいるかどうかという点については、子供が出生して故人の戸籍に入籍した当時の戸籍だけあれば十分ではないかと思うかもしれませんが、遡ってみると、前配偶者との間に子供がいたりすることもあります。だから、子供の全員を調べるためには、あるいは、本当に子どもがいないことを確認するためには出生から死亡までの戸籍をそろえる必要があるのです。
さて、出生から死亡までの戸籍を集めたことで、子どもがいないことが分かった場合は、今度は親が生存しているかどうかを調べます。親が生存しているかどうかは、親についての最新の戸籍を取得して調べます。
親が死亡している場合は、兄弟がいるかどうかを調べます。
兄弟がいるかどうかは、親についての出生から死亡までの戸籍を取得して調べます。兄弟とは、故人の父親・母親の子供ということですから、子供を調べるためにはやはり出生から死亡までの戸籍を集める必要があります。注意点としては、父親、母親、両方について、出生から死亡までの戸籍が必要な点です。
最後に、③については、相続人各人についての、相続開始後の作成日付となっている現在の戸籍となります。
外国人にも戸籍はあるの?
結論から言うと、外国人に日本の戸籍はありません。日本人と結婚している外国人にもありません。ただし、外国人の本国に戸籍制度がある(あった)場合はあります。具体的に言うと、台湾、韓国の二か国です。もっとも韓国では2008年に戸籍制度は廃止されました。
このように、外国人には日本の戸籍はありませんが、しかし相続人を確定するにあたっての本質的な考え方は、3-1に示した①から③で変わりません。
どの項目について証明しようとしているのかを意識しながら、日本で取得できる戸籍以外の公的書類や、本国の証明書を使用して、相続関係を確定します。
法定相続情報一覧図とは?
お気づきの方も多いでしょうが、相続関係を確定するための戸籍は多数にのぼる場合があります。実務の現場では、ファイル一冊分くらいの戸籍を扱いこともざらにあります。
預金解約から不動産の名義書き換え、税金の申告にいたるまで、多くの相続手続きで、こうした戸籍のセットが要求されます。
しかも、中には、戸籍を確認しても原本を返してくれず、出し切ることを要求する機関もあります(証券会社など)。そのような場合に、いちいち大量の戸籍を集めるのは、時間と費用の無駄といえます。
そのようなときに役立つのが法定相続情報一覧図です。
これは、相続手続きに必要な情報(相続関係や、住所、生年月日など)だけをコンパクトにまとめた図(系図のような図)を、法務局が審査、認証、データ保管してくれるという制度です。
法定相続情報一覧図とはこの時の図のことをいいます。
ここが重要なのですが、法務局の認証ある法定相続情報一覧図は、戸籍のセットの代わりとして使えます。
この法定相続情報一覧図は何度でも、何枚でも法務局から取得することができるので、たくさんの相続手続きが必要な時はとても便利です。
相続に関する相談は専門家へ
本コラムを読んでいただきありがとうございました。
読者の多くは相続問題に関心があったり、あるいは実際に問題を抱えている方だと思います。そういった方に本コラムが役に立てば幸いです。
自力解決に必要な時間、労力、健康、が惜しいと思われる方はぜひ専門家に相談してみることをおすすめします。
相談したら霧が晴れるような経験をされる方が多いです。
ありがとうございました。
この記事の著者
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司法書士
中垣 良祐
当事務所は相続問題・遺言・不動産登記の対応に精通している司法書士事務所です。当事務所はお客様ひとりひとりの事情を汲み取り、柔軟な対応を心がけています。ご相談の際はご自宅までの出張も可能です。初回相談は無料ですので、お気軽にご相談ください。
当事務所は相続問題・遺言・不動産登記の対応に精通している司法書士事務所です。当事務所はお客様ひとりひとりの事情を汲み取り、柔軟な対応を心がけています。ご相談の際はご自宅までの出張も可能です。初回相談は無料ですので、お気軽にご相談ください。
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