相続

財産分割

遺産分割で、親子関係、兄弟姉妹関係を気まずくしないために

遺産分割、よく聞く言葉です。大きくは遺産相続の中の一つに入ります。例えば、両親がいるとします。世帯主であるお父さんが亡くなった場合、お母さんはお父さん名義の動産不動産、預貯金の1/2の相続の権利があり、子供たちは残る1/2を人数で平等に配分すると、「法律上」は規定されています。しかし、実際は遺産分割の手続きを行い、様々な事情を考慮したうえで、具体的にそれぞれの財産を誰がどのくらい相続するのかを決める必要があります。

 

なにを遺産分割するの?

例えば、預貯金だけというわかりやすい金額だけを分ければいいものと違って、財産の中で不動産が主に占める時は、お金に換えるために家を売ってしまうとお母さんやその家族が今まで住んで来た場所が無くなる状態が発生します。

そんな場合に、話し合いで、1/2以上の財産である不動産をお母さん名義にして、残りのいくばくかの預貯金を子供たちで分けることもあります。お母さんが高齢で年金だけでは生活できず、預貯金を生活費にしている場合は、すべての財産をお母さん一人が相続することもあります。

お母さん、あるいは、お父さんが残る場合は、意外と遺産分割は、簡単な場合が多いです。

 

遺産分割で揉めるのは

お父さんもお母さんも亡くなってしまって、動産、不動産、預貯金を兄弟姉妹で均等割りとなった場合、いわゆる「骨肉の争い」というものが起きやすくなります。

例えば、両親と同居して、最後まで介護をして看取った家族は、その家にずっと住みたいと主張するでしょう。同じ子供なんだから、その家を売り、預貯金と合わせて、現金で分けようと主張する人も出ます。

兄弟姉妹の中で、両親から家を建てるとか事業資金とか、生前に援助してもらった場合、援助してもらっていない者からすると、その金額を加算して差し引きしないと公平ではないと主張する者も出てきます。

 

預貯金は動かない

金融機関は口座名義人が亡くなったことを知ると口座を凍結し、入出金など一切の取引ができなくなります。口座名義人が亡くなったことを金融機関が知るのは、相続人の一人がお金を引き出そうと窓口で手続きをしようとした場合がほとんどですが、地方紙の喪中広告でその日の夕刊や喪家の立看板などで知ることもあります。一度口座が凍結されると遺産分割が終了するまで凍結されます。誰かが、キャッシュカードを持って下ろすことはできません。なお、最近では民法の改正により、遺産分割の前であっても相続人が一定額の預金を下ろすことができるようになりましたが、金額に制限があることと、手続きに必要な書類を用意しなくてはならないこともあり、すぐに下ろせるというものでもありません。ある意味、預貯金になっているお金は一定の範囲では守られています。

しかし、タンス貯金などは、その事実を知っている者が知らないうちに搾取してしまうことがあるので、生前に注意深く確認しておいた方がベストと言えます。

 

遺産分割の該当者は?

亡くなった人の配偶者、戸籍上の子供たちが基本です。最近は、長い間介護を担ったお嫁さんにも権利が認められるようになりました~あくまでも主張しなければ自動的にはもらうことはできません。

この子供たちの中に、結婚やいろんな事情により養子として出てしまった人に権利がないと主張される場合があります。しかし、養子になった場合でも実子に変わりはないので、相続者に加わる権利があります~もちろん養家の両親の遺産も相続できます。

また、子供が親より先に亡くなった場合は、孫がその権利を引き継ぎます。

夫婦に子供がいない場合は、夫なり妻なりの親がいればその親が1/3、親はいなくても兄弟姉妹がいれば、その兄弟姉妹が1/4の権利を主張することもできます。

生きている時に、誰が相続者になるのか、各自シミュレーションした書類を残しておくといいと思われます。

 

人間のサガ

「兄弟は他人の始まり」という言葉があります。たまたま、同じ両親のもとに生まれただけで、終生仲良くしなければならないというのも今の時代は通らない話になりました。これからの時代は、結婚や離婚を繰り返したステップファミリーと呼ばれる家での遺産分割も多くなります。きちんと養子縁組をしておらず、戸籍的には、生まれた時の親の名字になっている場合も考えられます。親が結婚したから、自動的に親の配偶者の子どもになれるわけではないのです。

家族であっても、複雑な人間関係もあります。そんな時、他の人より少しでも多くもらいたいというのが人間のサガです。闘って闘って、遺産を受け取ったばっかりに、実家に二度と出入りできなくなることも珍しくはないことです。

 

揉める前に、専門家に依頼しよう

人が亡くなると、人の心はささくれだった気持ちになります。でも、遺産相続の手続きには期限があるものがあります。最初にやってくるのは相続放棄の期限です。相続放棄は、遺産の一切を相続したくない場合に家庭裁判所に申し立てる手続きで、相続の開始を知ったときから3か月以内に行う必要があります。3か月というと、心はまだ落ち着きませんね。そんな時は、弁護士、司法書士等の専門家に依頼するという手法があります。

相続人一人一人が、弁護士を立て遺産の取り分について他の相続人と交渉することもできます。確かに自分が少しでも多くもらうためにはそれもありでしょう。

しかし、話しがまとまらず争いに発展してしまえば、家庭裁判所に調停を申し立てるしかなくなり、たとえそこで決着がついたとしても相続人同士の人間関係の修復は難しくなるでしょう。決してこれは効率のいい依頼とは言えません。

相続人になる全員で、一人の専門家に依頼して、すべての遺産目録を作成してもらう。生前に贈与された分も明らかにし、また介護を主に行った人物も加え、法的に平等に遺産分割をしてもらうことが、今後の人間関係としてはいいと思います。

全員で一人の専門家に依頼するということは、全員の利益を考えてくれるということです。なお、このような遺産の整理に必要な書類の作成であれば、弁護士だけでなく司法書士等の専門家にも依頼することができます。

 

家を売るには、今日売りに出して明日現金化されるというものでもありません。

そういう意味で、長い目で見て、プロの技術と知識で平等に分配してもらうことが、安全安心なのです。

今、その現金は必要でしょうか。人間関係を悪化させてまで、多くもらいたいですか。

 

専門家に依頼するお金は誰が出すの?という単純な疑問もあると思います。相続人全員が一人の専門家に依頼するのであれば、その費用は全員で分担するという考え方もできます。専門家によってこの費用負担の考え方はそれぞれですので、依頼する前に一度相談してみてから決めることをお勧めします。

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この記事の著者

  • 平木 康嗣

    司法書士

    平木 康嗣

    司法書士・行政書士の両方の資格を持っています。当事務所では相続の不安を心配を和らげるために、親切で丁寧なサポートをしています。
    頂いたご相談は全て私が直接コミュニケーションを取るのでご安心ください。ご相談をしっかりヒアリングし、最適な解決策をご提案いたします。他の士業とも提携しているので、相続の手続きをワンストップで提供することができます。

    当事務所HP
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