売却

相続

相続登記を放置していた事例

相続登記はしないといけないの?

現在の不動産登記法によれば、相続登記を行わなかったとしても罰則や過料があるわけではないことから、不動産の所有者に相続が発生しても、手続を行わずそのままになっているケースが少なくありません。

では、相続登記をしないままでいるとどうなるのでしょうか?

 

相続登記をしていなかった事例

先日、所有している土地を、近所の人に売却する話がまとまり、手続きを進めたいと相談にお見えになった方がいらっしゃいました。そこで、いざ手続きを進めようとその土地の登記の状況を調べてみたところ、名義人が依頼者の曽祖父のままになっていることが分かりました。

不動産を売却するには依頼者(現在の所有者)の名義にしなければなりません。不動産の名義を相続により変更するには、遺言書がある場合を除き、相続人全員が合意した内容を書面にし、皆さんから実印をいただいた上で印鑑証明書を添付するというような準備をする必要があります。

今回の事例では、その相続人を調査したところ、数十名の相続人がいることが分かりました。

依頼者が知っている親戚もいれば、名前を聞いたこともないという人もおり、途方に暮れる状況です。

 

裁判による名義変更で問題解決

知っている人には会いに行き、また面識の無い人には手紙を送るなどし、協力を依頼しましたが、結局返事をいただけないような方がいたため、最終的には弁護士を依頼し、数年がかりの裁判手続きを経て名義を変更することとなりました。

このご依頼者様とは思いもかけずに長いお付き合いになってしまいましたが、「先代、先々代が先延ばしにしてきた面倒ごとを自分の子どもの代には先延ばしにできない」というお気持ちもあり、ようやく当初の目的を果たせたような状況です。

 

社会問題化する空き地・空き家

近時、相続登記が放置されているため、所有者の把握が困難となり、まちづくりのための公共事業が進まないなどのいわゆる所有者不明土地問題が話題に上ることがあります。また、適切な管理がされていない空き家が増加している大きな要因の一つとして、相続登記が行われず所有者が分からない建物が存在していることが指摘されています。

そういった状況を踏まえて、法務局では、平成30年より、長期相続登記等未了土地の解消作業が開始されました。(※)また、法務省の法制審議会では「相続登記の義務化」が議論されるなど、問題意識の高まりと合わせて、法制度が変わっていく可能性があるところです。

※長期間にわたって相続登記が行われていない土地について、法令(所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法)に基づき、亡くなった方の相続人等を探索した上で、職権で、長期間相続登記未了である旨等を登記に付記し、その相続人等に登記手続を直接促す、といった取組みです。

 

〇まとめ ~相続登記をしないことのデメリット~

以上のようなことから、相続登記をしないことをデメリットを整理してみました。

〇不動産を処分(売却など)しようとするときに、現在の所有者の登記名義になっていないと処分ができない。

〇時間が経過すればするほど、手続きに関与する人が増えてしまい、調査に労力を要する。

〇関与する人が増えると、行方不明、認知症、無関心の人がいるなどのリスクが増え、手続きが進まない、あるいは進めようとしたときに膨大な時間とコストがかかってしまうことがある。

〇適切な管理がされない空き地、空き家が増えることが社会問題化しており、相続登記の義務化が検討されるなどしている。今後、問題意識の醸成により、相続登記を制度的に要請される可能性がある。

相続手続きは、相続人間の人間関係によるところも大きく、手続きを進めたくても進められないこともありますので、一概には言えませんが、一般的には、一時的な手間を惜しみ手続きを先延ばしにするよりは、今、対処をした方が、将来的には手間もコストも少なくて済むということが言えるのかもしれません。