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遺言書とは?遺言書の概要、効力等を知る

遺言事項とは?

一般的に用紙に書き記してあったり口頭での遺言は法的効力がありません。遺言書という形式で作成するにあたり法的効力が認められる事項を「遺言事項」といいます。遺言事項は,民法やその他の法律で規定があって、「遺言書」に記載することで初めて遺言としての法的効力が発生するのです。

遺言者の気持はさておいて、相続が始まると相続者たちはよくもめることになりますが、そういった争い事を防いだり拡大させないようにするためにできているのが「遺言事項法定主義」という法律です。

遺言事項の種類

遺言事項には実は4種類ありますので、内容を説明しましょう。

1. 財産に関する遺言事項
2.身分に関する遺言事項
3.遺言執行に関する遺言事項
4.その他の遺言事項

各々を確認していきます。

1.財産に関する遺言事項
法定相続分というのは民法で決まっています。
例えば父親が亡くなった場合、遺産の半分は配偶者である妻へ、残りの半分は子供たちで平等に分けることになります。ですから、もし子どもが二人いた場合、
遺産がわかりやすく100万円だった場合、妻は50万、こどもAに25万、こどもBに25万といったようなに遺産相続することになります。

・財産処分(遺贈)
特定の人に財産を遺贈する財産処分のことですが、遺贈という形で財産を寄付することもできます。また、この方法は法定相続人以外の人に遺産を残したい場合に有効になります。

・相続分の指定
遺産をそれぞれの相続人にどの位の割合で相続させたらいいのか、また、本来の指定割合以外で違う相続分を指定することもできます。

・遺産分割方法の指定
遺産分割の割合以外の遺産において、どの遺産を誰に分けるか、どの遺産分割方法を用いるかを指定することができます。(例:土地は妻に建物は子供になど)

・遺産分割の禁止
被相続人(遺言者)が亡くなった段階で、即、相続は始まりますが、それは、5年を超えない範囲であれば遺産の分割を禁止することもできるのです。
例えば、相続人の中に未成年者がいた場合、なるべくなら成人してから相続の意思決定ができてからにしたいなどがあるでしょう。

また、一部の遺産についてであったとしても、特定の遺産であれば、分割を禁止することもできます。

・担保責任の指定
相続人が遺産を引き継いだ後、遺産になんらかの問題があった場合、他の相続人と一緒に被った損害を賠償する責任を負う、という「担保責任の指定」が相続人同士の間で行えます。
また、遺言では、この相互における担保責任を、どの相続人が負うのか、またその割合はどうするのかも指定できます。

2.身分に関する遺言事項
・非嫡出子の認知
婚姻関係にない状態で生まれた非摘出子がいた場合、父親からの認知があれば法律上で親子関係が成立します。ですから、普通に生まれ育った婚姻関係の元で生まれた嫡出子と同様に相続人になることができるのです。
遺言で認知もできるのですが、父親本人が生前に認知届を出して処理することが多く、もし遺言で行う場合は、遺言執行者を選任しなければなりません。

・未成年後見人の指定
遺言者が亡くなることで、親権者が誰もいなくなった未成年の子がいたとします。その場合、未成年後見人の選任が必要です。未成年後見人は、親権者の代わりに未成年者の身の回り等に留まらず、財産管理をも代行します。未成年者の親権者が遺言で指定する場合もありますし、親族が家庭裁判所に申し立てる方法で選ぶこともあります。

・生命保険の受取人の変更
生命保険の死亡保険金の受取人を変更したい場合は、どうしたらいいでしょう?現在は保険法が改正されたので、遺言で受取人変更もできます。ですが、保険法施行前に締結した契約内容においては、遺言があった場合でも保険会社の判断に委ねられてしまいます。

遺言で死亡保険金の受取人を変更する場合は、誰もがわかるようにしておかないと、トラブルの原因になったりしますので、わからない場合は、専門家に相談しましょう。

・相続人の廃除
被相続人である遺言者は、自分の意思で相続人の相続権を失効させることができ、これを「相続人の廃除」といいます。その手続きは、被相続人が家庭裁判所に申し立てる生前廃除、また、遺言で残す遺言廃除があります。

遺言廃除では、遺言執行者が手続きをする必要があるので、遺言執行者を選任しなければなりません。

3.遺言執行に関する遺言事項
・遺言執行者の指定
遺言執行者は遺言で指定することができます。相続人のみでも構わないのですが、込み入った認知関係や相続人の廃除のような場合には、遺言執行者でなければ対応できません。遺言にそういった内容の記載があるのに遺言執行者名が載っていなければ、家庭裁判所で選任してもらう必要があります。

4.その他の遺言事項
遺言事項として下記も効力があります。

・祭祀承継者の指定
祭祀財産(墓石・墓地・仏壇・位牌等)を引き継ぐ祭祀承継者の指定ができます。指定が遺言にない場合、慣習に委ねられます。

・一般財団法人の設立
一般財団法人は、官庁の許可を必要なく設立することができますが、その手続きは遺言執行者が行うことになるので、遺言執行者を選任しなければなりません。そのときかかる拠出金は300万円以上の設立資金として必要になりますが、その金額は、遺産のなかから持ち出しとなります。

・特別受益の持ち戻しの免除
もし特別受益(生前贈与など)を受けた相続人がいた場合、特別受益分は遺産に戻さなければなりません。それを相続人の間で分配するので、特別受益を受けた相続人は、相続分から特別受益分を差し引かれます(特別受益の持ち戻し)。ですが、特別受益の持ち戻しをしないように、遺言で記載表示することもできるのです。

・信託の設定
例えば一定の目的があり、決まった人に遺産運用を任せ、その収益を渡してほしい場合があったとします。その場合、被相続人である遺言者は受託者に遺産を移して管理や処分をしてもらうことになり、それを信託といいます。通常は生前に信託契約を締結しますが、遺言で信託設定することもできます。

遺言事項に該当しないもの

遺言書に書いてあっても「付言事項」という法的に効力がないものがあります。

・葬儀関係(例:埋葬方法や葬儀に関する依頼等)
・臓器提供に関する表意
・遺留分侵害額請求の禁止
・家族、お世話になった方々への感謝の表意

遺言は専門家に依頼するのがおススメ

遺言書の作成は自分で行うこともできますが、迷うことも多々あり、書いた内容そのものが無効になってしまうこともあります。

さらに、遺言の様々なトラブルを避けるためにも、専門家に作成依頼することをおススメします。専門家に依頼することで、遺言書がない場合の遺産分割もスムーズになるからです。
また、確実な遺言書が作成でき、遺言書の内容に不満な場合は対処法も考えてもらえます。遺言書を巡る様々なトラブルや争いごとの早期解決ができるということです。

まとめとして

遺言書に書くことで効力がある遺言事項、また書いてあっても法的な効力のない付言事項があること等で、モメている例が多々あります。
トラブルで困らない遺言対策のためには、専門家に依頼するのが得策になるでしょう。
ぜひ頼ってみてください。

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この記事の著者

  • 司法書士

    土屋 顕大