相続
相続全般の知識・手続き・相談
相続は誰に相談すべき?
相続は誰に相談すべき?
相続の相談先はどこなのか。一般的には、下記(ア)~(カ)の専門家が相続に関係しています。
厄介なのが、相続が発生した際には、一つの専門家では、すべての手続が終わらない事です。では、誰に最初に相談すれば良いでしょうか?
結論としては、横の連携が取れているなら、最初に相談するのはどの専門家でも大丈夫です。あえて絞るとすると、税金の有利不利の判定が必要なので税理士が良いのではないかと思っています。一般的に相続専門とか、資産税に強いと謳っている場合は、横のつながりがあるケースが多く、窓口業務(交通整理)が出来ます。
横のつながりのない専門家に当たってしまうと、縦割り行政と同じで、それはうちの仕事ではないからと突き放されて終わりとなってしまうこともありますので注意が必要です。
費用面に関してですが、資格を持っていない業者さんが入る場合は、その方の取り分が発生しますので、あいだに資格がない人が入れば入るだけ費用は膨らみます。裏事情ですが、弁護士(弁護士職務基本規程13条1項、2項)、司法書士(司法書士法施行規則第26条、司法書士倫理 第13条)は、顧客を紹介したり、された際に紹介料を受け取ることも、支払うことも禁止されています。つまり、専門家同士で連携をとっている限り、上乗せは発生しませんので安心です。
参考までに各専門家の相続における役割を記したいと思います。
- 税理士・・・相続税の計算
税金の専門家・・・税金の計算は納税者本人か税理士しかできません(*)。無料でも税金の計算をすると違法となります。相続が発生した場合、相続税の申告の有無を把握する必要があるため、税金計算は必要で、必須の専門家です。通常、税理士は企業の決算・申告を行うことが中心業務のため、相続に長けている税理士が少ないのが現実です。
名義変更手続きや、財産目録の作成、遺産分割協議(又は遺言執行)を行うこともあります。
(*)一定の手続きを行えば弁護士又は弁護士法人も業務を行うことが可能です。
- 司法書士・・・不動産及び会社関係の登記
登記の専門家・・・登記書類の作成、手続きは本人か司法書士、弁護士しかできません。相続財産に不動産がある場合は、必須の専門家です。
名義変更手続きや、財産目録の作成、遺産分割協議(又は遺言執行)を行うこともあります。
- 弁護士…もめた時のプロフェッショナル
法律・訴訟(もめごと解決)の専門家です。 資格的には税金計算も登記手続きも出来ますが、実際にその分野に詳しい弁護士は稀で、もめた時や、遺言執行人として登場するケースが多いです。争いごとが生じた場合は必須の専門家です。
名義変更手続きや、財産目録の作成、遺産分割協議(又は遺言執行)を行うこともあります。
- 行政書士・・・窓口業務(交通整理)
官公署(各省庁、都道府県庁、市・区役所、町・村役場、警察署等)に提出する書類の作成、同内容の相談やこれらを官公署に提出する手続について代理することを業としています。ただし、法務局提出書類の作成は出来ないため、登記は出来ません。役割としては、下記の(オ)に近いと考えられます。
名義変更手続きや、財産目録の作成、遺産分割協議(又は遺言執行)を行います。
- 信託銀行・相続診断士・・・窓口業務(交通整理)
信託銀行は大企業の信頼のもと安心を売っています。名義変更手続きや、財産目録の作成、遺産分割協議(又は遺言執行)までは行えますが、その先の税金に関する業務や、登記に関する業務は出来ないため、これらの業務は提携先の税理士や司法書士が行います。お客様にお会いして、書類の収集や助言などの窓口業務や揃った資料を各専門家に渡すという交通整理を行うことが主な業務になります。資格の問題があり、自分たちでは税金計算や登記は出来ないのですが、逆にすべての業務範囲の専門家を駆使することが出来ます。
- その他
下記は、それぞれの手続き書類の提出先であり、同時に相談窓口でもあります。労力を惜しまず、ご自身で手続きをしたいという方は、インターネットと、下記の相談窓口を利用して、ご自身で手続きをすることも不可能ではありません。問題なのは、行政は聞いたことに対しては丁寧に回答してくれるのですが、総合的に判断して有利な方法を教えてくれない可能性があります。そのため、相続税が発生するようなケースについては、相続に詳しい税理士に相談することをお勧めします。
- 税務署
相続税の申告書の提出先です。
また、相続税の計算については、電話で一般的な質問に答えてくれる国税局電話相談センター(所轄の税務署に電話すると音声案内でつながります。正直、難易度の高い質問に対する回答のレベルは総じて高くないです。ホームページに書いてあるような簡単な質問ならこちらが良いです。)と、個別具体的な内容について相談が出来る税務署窓口(回答レベルは最高レベルですが、専門性が高いため、敷居は高いと思います)があります。税務署の窓口相談は事前予約が必要ですので、事前に電話で予約してから伺う必要があります。両方とも相談は無料です。
- 法務局
登記関係書類の提出先です。
また、登記手続きについて、申請書類の記載方法等を教えて貰える登記相談窓口があります。例えば、東京法務局の登記手続案内は、完全予約制で、前日までに予約が必要です。こちらも、相談は無料です。
- 裁判所
相続の放棄、限定承認、相続の放棄の期間の伸長、遺言書の検認、遺留分放棄の許可等を行う場所です。そのほか、もめた時の、遺産分割調停、遺留分侵害額の請求調停等、各種相続に関する調停も行っています。
また、各地の家庭裁判所で家事手続案内とうい相談窓口があり、無料で、予約の必要なく相談可能です。
相続発生後の手続き
相続発生後の手続きとしては、おおまかに下記があり、相続人ご自身又はそれぞれの下記番号の専門家が関与することが多いです。
①相続人 ②税理士 ③司法書士 ④弁護士 ⑤行政書士、信託銀行、相続診断士
*は、通常、その専門家がやらない業務です。
葬儀の手配・・・①
死亡届出書の提出・・・①
財産の把握・・・①、②、③、④、⑤
相続放棄・限定承認の判断(3カ月以内)・・・①、②、③、④、⑤
準確定申告書の提出(4カ月以内)・・・①、②、*④
戸籍・住民票・・・①、②、③、④、⑤(⑤は委任状が必要)
印鑑証明書の取得・・・①(通常印鑑登録カードが必要)
金融機関の名義変更手続き・・・①、②、③、④、⑤
生命保険の請求・・・①
相続税の計算・・・①、②、*④
遺産分割協議(又は遺言執行)・・・①、②、③、④、⑤
相続税の申告(10カ月以内)・・・①、②、*④
不動産登記・・・③、*④
遺留分侵害額請求・・・①、④
調停・裁判・・・①、④
年金、健康保険の手続き・・・①
埋葬費の請求・・・①
クレジットカードの停止や水道光熱費・NHKの名義変更・・・①
車の名義変更・・・①
相続発生前の手続き
相続発生前に生じる項目としては、代表的なものとして下記があり、それぞれの番号の専門家が関与することが多いです。
①相続人、②税理士、③司法書士、④弁護士、⑤行政書士、信託銀行、相続診断士
遺言書の作成・・・①、②、③、④、⑤
相続税の試算・・・①、②、*④
生前贈与の実行・・・①、②、③、④、⑤(税金の計算は、①、②、*④)
遺留分放棄・・・①、②、③、④、⑤
家族信託(民事信託)・・・①、②、③、④、⑤
成年後見制度・・・①、②、③、④、⑤
まとめ
相続の相談は、専門家間の交通整理が出来るのなら、どの専門家が窓口でも大丈夫です。一つ言えるのは、登記手続きはどの司法書士(出来る先生は、こちらの意図をくみ取ってくださるので、正直楽です。)がやっても最終的には同じものが出来るのですが、相続対策や、相続税の計算は、その手法や財産の分け方(誰が幾ら取得する)、評価の仕方によって、異なるものが出来ることが多々あります。相続税が発生するケースについては、相続発生前及び相続発生後ともに、必ず相続税に詳しい税理士に最初に(紹介を受けた案件については、既に財産の分け方が決まっていたり、話がある程度進んでいるケースなどもあり、途中から変更しづらいこともあります。)相談することをお勧めします。
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この記事の著者
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税理士
太田 裕二
愛媛県出身。BIG4の税理士法人を経て、2015年に独立。税理士の他に宅地建物取引士の資格も持っています。
得意分野は相続税対策と生前贈与、不動産の収益力アップです。相続税対策や株価評価は様々なケースの実績が多数あります。相続税や企業の税務に関する著書も執筆しています。当事務所HP
https://www.life-tax.com/
愛媛県出身。BIG4の税理士法人を経て、2015年に独立。税理士の他に宅地建物取引士の資格も持っています。
得意分野は相続税対策と生前贈与、不動産の収益力アップです。相続税対策や株価評価は様々なケースの実績が多数あります。相続税や企業の税務に関する著書も執筆しています。当事務所HP
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