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相続が発生!誰が相続人?相続分はどのくらい?
目次
生前対策(遺言や家族信託)って必要なの?
先日ご相談に来られたお客様(70歳代の女性)から次のようなご依頼を頂きました。
『夫が亡くなったので、夫名義の自宅や預貯金の相続手続きをお願いしたい。子供や両親はおらず、夫の兄弟姉妹は既に他界しているので、相続人は私一人です。』といった説明があったので、遺言書の有無や、甥・姪の存在を聞いてみると、お客様からは『「夫は、私たちに子供がおらず、両親や兄弟姉妹も既に他界していたのでわざわざ遺言を残しておかなくてもいいだろう。私が夫の全財産を相続することになるのだから」と言っていました。夫は5人兄弟の末っ子で、甥・姪は15人位はいると思いますが、お兄さん・お姉さんが亡くなってからは、長い間連絡もしていないので・・』といった回答を頂きました。
もうお気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、今回のケースでは、法定相続人は、奥様と甥・姪となるため16名全員での遺産分割協議が必要になります。そのことを説明すると、お客様はとても困った表情で言われました『そんな・・・、甥や姪も相続人になるなんて知らなかった。連絡先も分からないのにどうすればいいの・・・』と。
今回のケースは、甥・姪の方に手紙や電話にて連絡を行い、遺産分割の話を進めた結果、大半の財産は奥様が相続できましたが、預貯金の一部は甥・姪が相続することとなりました。
亡くなられた旦那様も、全てを妻に相続させたいと思っていたのに実現できなかったケースです。では、旦那様はどうしておくべきだったのでしょうか?
そうです。残された家族が財産を相続できない、10数名での煩雑な手続きが必要となるといったことを避けるためにも、生前対策(遺言や家族信託など)をしておけば良かったのです。
今回のコラムでは、相続が発生したときに、誰が相続人で相続分はどのくらい?生前対策(遺言等)をしていた場合とそうでない場合の相続についてご説明致します。
相続人は誰?
民法では、人が亡くなり相続が発生したときに、被相続人(=亡くなられた方)の財産を引き継ぐことができる法定相続人について決められています。その法定相続人は、被相続人の親族の内、次のA及びBとなります。
A:配偶者(配偶者は必ず法定相続人となります。但し、内縁の妻や離婚している元配偶者は法定相続人とはなりません)
B:親族の内、次の優先順位の高い方が法定相続人となります。
第1順位:子供(子供が先に亡くなっている場合は孫。子供・孫とも先に亡くなっている場合はひ孫。左記のように直系卑属が代襲相続します)
第2順位:父・母(父・母ともに先に亡くなっている場合は祖父・祖母。左記のように直系尊属が代襲相続します)
第3順位:兄弟姉妹(兄弟姉妹が先に亡くなっている場合は先に亡くなっている兄弟姉妹の子供(被相続人の甥・姪)が代襲相続します)
例えば、被相続人の第1順位である子供が相続人となると、第2順位の父・母(直系尊属)と第3順位の兄弟姉妹は相続人とはなりません。反対に第1順位の子供(直系卑属)と第2順位の父・母(直系尊属)がいない場合や相続放棄等をした場合は、第3順位の兄弟姉妹が相続人となります。
相続人について詳しくはこちら
法定相続分(財産をもらえる権利)はどのくらい?
法定相続分は、法定相続人となる方の組み合わせにより次のとおり異なります。
法定相続人が、被相続人の
①配偶者と子供の場合 :配偶者が1/2
子 供が1/2(子供2人の時は各々の子が1/4)
②配偶者と父・母の場合 :配偶者が2/3
父・母が1/3(父は1/6、母は1/6)
③配偶者と兄弟姉妹の場合:配偶者 が3/4、
兄弟姉妹が1/4(兄と妹の2人の時は、各々が1/8)
④配偶者のみの場合 :配偶者が全て相続
⑤配偶者がいない場合 :配偶者以外の法定相続人が全て相続
(例えば、子 供2人だけが相続人となる場合、各々が1/2)
(例えば、兄と妹2人だけが相続人となる場合、各々が1/2)
遺産分割の進め方は?
法定相続人の中から、相続人が決まったら、財産をどのように分けるかを話し合いで決めます。その話し合いを一般的には、遺産分割協議といい、遺産分割協議において相続人全員が合意することで遺産の分割方法が決定します。先ほどの法定相続分に従って遺産を分ける方法もありますし、法定相続分に基づかずに相続人の内の1人だけが全ての財産を相続することも他の相続人の合意があれば可能です。
一方で、この遺産分割協議には、全ての相続人の参加・合意が必要となるため、各相続人の思い・要望が異なる等により、分割方法が全員の合意に至らず、家庭裁判所で調停を行うケースもよく聞かれます(家庭裁判所における平成30年の遺産分割等の調停件数は1万3739件)。
遺言書があるとどうなるの?
先ほど、法定相続人と法定相続分について説明しましたが、被相続人が遺言書を残している場合は、その遺言書に記載されている内容が優先されます。つまり、遺言書の中に例えば①法定相続人ではない人に財産を遺す(遺贈)といった内容や②法定相続分とは異なる割合で相続させる旨が記載されている場合、その遺言内容に則って財産が相続されるのが一般的です。(但し、遺留分(=一定の相続人に認められている最低限の取得可能な相続割合)には注意が必要です)
相続争いや煩雑な相続手続きを避けるためには?
遺産分割がもとで相続人間で相続争いが勃発し以後顔も見なくなった等、相続が「争族(争う家族)」と呼ばれることもよく聞かれます。大切な家族が「争族」にならないようにするためには、ご自身がお元気な時に生前の対策を行っておくことが良いのではないかと思います。
<主な生前対策>
①遺言を残す
②家族信託を使って、財産の承継先を決めておく
(遺言書では実現できない内容でも家族信託であれば実現できることもあります)
③保険を活用した相続税対策
生前の対策は、ご自身だけではなくご家族の負担軽減といった観点からも大変重要です。どんな対策が自分にあっているのか?どういった対策をしておくべきなのか?といったお悩みをお持ちの方は、是非、ご相談下さい。(お客様の現状をお伺いし、お客様と一緒に対策を考え、対策案をご提案させて頂きます。)
この記事の著者
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司法書士
鈴木 昇
横浜市出身。日本大学卒業後、神奈川県の職員を経て、司法書士試験に合格。2005年に当事務所を開業しました。
「高齢者支援・相続相談支援センター」を立ち上げ、相続の不動産名義変更から遺言書作成、家族信託、相続税と幅広い悩みにワンストップで対応できることが強みです。
横浜市出身。日本大学卒業後、神奈川県の職員を経て、司法書士試験に合格。2005年に当事務所を開業しました。
「高齢者支援・相続相談支援センター」を立ち上げ、相続の不動産名義変更から遺言書作成、家族信託、相続税と幅広い悩みにワンストップで対応できることが強みです。 -