相続
財産分割
兄弟で揉めない財産分与の方法が知りたい
目次
兄弟姉妹で揉めない相続財産を分割するための対策
~相続を争族にしないために今できること~
うちは財産が多くないから揉めることはないと思われている方も多いと思いますが、実際は遺産が少ない方やご自宅しかない方ほど揉める傾向にあります。
そこで、相続を争族にしないために事前にできる対策をみていきましょう。
相続発生前にできる対策
遺言
遺言があれば、法定相続分に関わらず、遺言の内容どおりに相続されます。
自筆証書遺言の財産目録については、自筆で遺す必要はなくなるなどの方式が緩和されましたが、せっかく遺言を遺しても効力のないものや揉めるきっかけとなってしまうような遺言も散見されますので、作成される際は専門家の助言を求めることをお勧めします。
生前贈与
相続発生前の、生きている間に実際に権利を譲ることで、解決を図ることも有効な手段です。
例)父と娘で同居している自宅を、娘に生前に贈与して名義を変更する。
贈与税と相続税を考慮して渡す分を検討する必要がありますが、相続時精算課税制度を活用し、贈与税も相続税もかからず贈与できる可能性もあるため、税理士、司法書士などの専門家に相談しながら慎重に進めることが重要です。
民事信託(家族信託)
財産を所有する親などが委託者として、お元気なうちにその財産の「名義」だけを信頼できる子供ら(受託者)に移転し、その権利(賃料等)については親が「受益者」として、そのまま受け取れるようにするというような、権利はそのままで名義だけを変えられる新しい契約形態です。
例)アパート経営している母、今は元気だがいずれは3兄弟の長男に経営を引き継ぎたいと考えている。長男だけに渡すと不公平だし他の兄弟に代償金として渡せるだけのまとまったお金はない。共有にして経営について揉める事態も避けたい。
委託者:母 受託者:長男 第一受益者:母 第二受益者:3兄弟 のような形でアパートを信託財産として、アパート経営は受託者である長男のみで行え、母死亡後は賃料収入を兄弟で分かることによって揉めないで済む。
生命保険の活用(遺留分対策)
生命保険は、相続税の非課税枠(法定相続人の数 × 500万円は非課税)として活かせるというメリットがあります。
また遺言と組み合わせることによって、遺留分対策としても有効な手段になりえます。遺言を遺していたとしても、遺留分侵害額の請求をされた場合、遺留分侵害額に相当する金銭は払わなくてはいけなくなります。そこで遺産の一部を保険料として支払い、生命保険の死亡保険金として受取人にお金が渡ることで、その分は相続財産ではなくなるため遺留分の侵害額を少なくし、さらに請求された金額の支払原資にもできるというメリットがあります。
例)事業を継がせたい長男に対して他の兄弟が遺留分を請求し、事業が破綻するようなことの無いよう、被保険者:父 受取人:長男 というような請求される可能性のある遺留分侵害額をカバーできるような保険に加入しておく。
遺産となる財産の整理
休眠口座や使っていない口座は相続発生前に解約してシンプルな形にしておくことも大切です。特に相続税の申告が必要な場合は、全ての口座の残高証明書を提出することが求められ残高証明書の発行手数料の方が払戻をする金額よりも高くなるということもあるため、できるだけ遺されたご家族の負担を減らす工夫をしておきましょう。
ここまでは、生前のうちにできる対策を見てきましたが、ここからは相続発生後のことを見ていきましょう。
相続発生後に取りうる手段
遺産分割協議(現物分割、代償分割、換価分割、共有)
相続人が認知症、消息不明、音信不通の場合は難航する可能性もございます。また、最初の話の持っていき方を間違え揉めてしまうケースも少なくないため、注意が必要です。
遺産の分割方法としては大きく分けて4つの方法があります。
- 現物分割
自宅は長男、A銀行の預金は長女、B証券会社の株は二男が相続、というようにそれぞれ引き継ぐ人を決めて分ける一番分かりやすい分割方法です。資産価値によって不平等感が生まれやすいため、遺し方のバランスを整えておく必要があるでしょう。 - 代償分割
自宅、賃貸アパートは長男が相続、長男は代償金として長女、二男にそれぞれ代償金として金○○万円を支払う等、遺産をもらう代わりにお金で支払う方法です。代償金を支払うお金の確保が必要になってきます。 - 換価分割
自宅等を売却し、売却代金からかかった諸費用を差引いて残ったものを相続割合で分配する等、共有にしたり分割できない遺産をお金に換えて分ける方法です。だれかが住んでいたり、すぐに売却できないなどの問題が起きる可能性があります。 - 共有
長男長女で2分の1ずつ駐車場を共有名義にして、入ってくる分を分けるなど、財産自体を共有名義にする方法です。売却する際は、共有者全員が納得してからでないとできないなど、紛争の種になってしまう可能性もあるため慎重な協議が必要です。
相続放棄、限定承認、相続分の譲渡・放棄
単純承認で、遺産分割をするのではなく、家庭裁判所で相続放棄、限定承認の手続きを行うことも有効な方法ですが、慎重な判断が必要なため、専門家に相談されてから行うことをお勧めします。
また遺産分割協議に加わるのではなく、自分がもっている相続人の地位そのものを譲渡や放棄をすることも可能です。
調停
遺産分割協議の話し合いがまとまらず揉めてしまったような場合は、家庭裁判所に調停を申し立て解決を図ることも可能です。
揉めないようにするための対策を今から始めていきましょう。
お気軽にご相談ください。
この記事の著者
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司法書士
渡辺 由希子
神奈川県出身。法政大学卒業後、司法書士事務所勤務を経て、なでしこ司法書士事務所を開業。司法書士の他にファイナンシャルプランナーと相続アドバイザーの資格を保有しています。
当事務所は老後を安心して過ごすための対策に特化しており、相続対策や相続手続きもサポートしています。当事務所HP
http://www.ndsk-shihou.com/
神奈川県出身。法政大学卒業後、司法書士事務所勤務を経て、なでしこ司法書士事務所を開業。司法書士の他にファイナンシャルプランナーと相続アドバイザーの資格を保有しています。
当事務所は老後を安心して過ごすための対策に特化しており、相続対策や相続手続きもサポートしています。当事務所HP
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