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限定承認が有効なケースとは?またそのメリットデメリットとは?

相続財産には、色々なものがあります。預貯金や有価証券、それに不動産といったプラスの財産だけでなく、借金つまり債権といったマイナスの財産もあります。通常、相続と言うと、プラスもマイナスも全て相続する、あるいはすべてを放棄するかどちらかという風に思われている方も多いと思いますが、一部だけ相続するという制度もあります。このような相続のことを限定承認といいます。今回は、そんな限定承認について、見ていきます。

 

限定承認とは?どのような場合に限定承認が有効?

限定承認とは、相続財産の一部のみを限定的に相続することを言います。相続と言うと、プラスもマイナスも全ての財産を相続する単純承認と、プラスもマイナスも全ての財産を放棄する相続放棄というのが一般的です。それに対して、限定承認とは、簡単に言うと、プラスの部分だけをそれに見合う負担をすることで相続する、それを超える部分を相続しないという相続方法になります。勿論、イレギュラーなものかもしれませんが、次のような場合有効と言えます。

・どうしても形見の品物や思い入れのある家だけは手元に残したい。

・あとから借金等の負の財産が出てくるか不安だ。

・家業を承継していきたいが借金が不安。

勿論、相続した分に対して負担はしなければいけませんが、それ以上の負担を引き継ぐ必要はありません。

 

では単純な例を挙げて見ていきます。

例えば、被相続人が1,000万円の負債を抱えていたとします。そして、プラスの財産として自宅の持ち分が500万円分あったとします。その場合、単純承認の場合は500万円の価値のために、1,000万円分の債務を抱えることになります。この場合、相続財産に当たる500万円分の処理を行えば、そのまま自宅の権利を手に入れることが出来、住み続けることができるというのが限定承認です。また、そもそも相続財産の全容がはっきりとしない、全てを清算するとプラスになるかマイナスになるかわからないとった場合、限定承認の場合は、後にマイナスの方が大きいと分かった場合、その分は相続する必要はありません。プラスの部分だけを相続し、それで賄える範囲のマイナスを清算して終わりということになります。勿論、全てのケースでこのようなスキームが有効なわけではありませんが、申し立てが認められれば、このようなことも可能となってくるのです。

 

限定承認のメリット、デメリットは?相続放棄との違いは?

では、限定承認についてまとめていきます。まずは限定承認を行うメリットですが、次のようなことが挙げられます。

 

<限定承認のメリット>

・どうしても残したいものがあれば、その分の負担を行えば、残すことができる。

・相続するプラスの相続財産の範囲内のみマイナスを補えばいい。

また、マイナスについてですが、次のような点があげられます。

<限定承認のデメリット>

・手続きが煩雑

・場合によっては、被相続人の準確定申告をする必要があり、「みなし譲渡所得」によって税負担が大きい場合がある。

・相続人全員で申し立てる必要がある。

また、馴染みのある相続放棄と較べると、相続放棄には、

・相続放棄の方が手続きが簡単。

・相続放棄は自分一人でもできる。

といった特徴、メリットがあります。

 

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限定承認の条件、手続き方法は?

限定承認の概要について紹介してきましたが、その具体的な条件や手続きについて見ていきます。

まず、相続人全員が共同で申し立てる必要があります。つまり相続人全員が限定承認について合意していることが必要となります。相続人それぞれに事情があり、また被相続人や相続人間の関係性もあるでしょうから、案外ハードルが高い場合があります。

そして、限定承認は家庭裁判所に申し立てることになるのですが、相続開始を知った日から3ヶ月以内に提出する必要があります。それを過ぎれば単純承認となります。この3ヶ月というのは長いようで短いものです。亡くなった後は、弔いや色々な雑事があるでしょうから、思ったよりも早く過ぎていきます。3ヶ月以内に申立書を提出できるような状況になるのは大変かもしれません。

そして、申し立てを行った後、知りえる範囲の債権者や受遺者に対して、「2ヶ月以内に借金などの請求の申し出てください」といいう催促を個別に行わなければいけません。また、相続人が知りえない債権者や受遺者が存在する場合に備えて、官報に5日以内に公示をしなければいけなくなります。

財産の処分についても単純承認に較べると煩雑な手続きを経る必要がりますから、限定承認が申し立てられるケースは少ないものとなっています。

まとめ

今回は、限定承認について見て来ました。確かに、条件や手続きが煩雑なもので、使い勝手がいいものではありませんが、制度としてこのようなものがあるというのは、知っておいて損はありません。そして、限定承認を選択肢に入れる場合は、早めに相続に詳しい専門家に相談しておくことが大切だと思われます。いざという時に、故人への想いを大切にするためにも、限定承認というのも頭の中に入れておいてくださいね。

 

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