相続
相続人
遺産相続で孫に財産を渡すためには?
大切な遺産、誰に遺したいですか?
前置き
遺産相続、という言葉、どんなイメージを持ちますか?
「遺産相続」という言葉を使うときは、
1.自分の財産を子孫に遺す
2.親などから自分が財産を引き継ぐ
という二つの立場があります。今回は、自分の財産を子孫に遺す立場という前提で、考えてみましょう。
最近、相続についての法律が変わったとか、遺産相続で揉めないために、という言葉を見聞きするようになったと思います。
少し前までは、自分が亡くなったときのことを考えるのは縁起が悪い、などという意見もありましたが、数年前からの「終活」ブームで、「自分が旅立つときは、なるべく遺された者が揉めないように、大変でないようにしたい」という考え方が広まってきました。
「遺産」というのは、人がそれまでの人生で頑張って働いて得た、大切な財産です。
生きているときは、その財産を、美味しいものを食べたり、趣味に使ったり、家族や大切な人のために使ったり、「自分がどう使いたいと思うか」に従って使ってきたことでしょう。人生のラストにあたっても、その大切な財産を、自分の思いが反映されるように遺したいですよね。
相続財産を引き継ぐ人は法律で決まっている
人が亡くなると、法律上は死亡と同時に「相続が発生」します。相続とは、亡くなった方のプラス財産・マイナス財産を相続人が引き継ぐことです。そして、「誰が相続人か」つまり、「誰が財産を引き継ぐか」というのも法律で決まっています。
夫婦と子供、という典型的な家族を考えてみましょう。
配偶者(夫や妻)は常に相続人です。
そして、子供がいれば、子供が相続人になります。
この場合、亡くなった人の親が生きていても親は相続人にはなりませんし、きょうだいや孫も相続人ではありません。(代襲相続など特殊は場合を除きます)
それでは、自分の大切な財産を、自分の思う相手に、思うように引き継ぐことは出来ないのでしょうか?
相続財産を残す人を自分で決める方法とは?
それを可能にするのが、遺言と生前贈与です。
遺言は、遺された人たちへのラストメッセージです。
遺言に「○○の土地と建物は妻に相続させる」「〇〇銀行の預金は、長女に相続させる」などと書くことにより、誰に、何を引き継ぐか、を自分で指定することができます。
引き継ぐ相手は、相続人だけとは限りません。お世話になった友人や恩人、同居して長く可愛がってきた、孫へも引き継ぐことができます。
遺言内容は法律で決められた相続分より優先される
遺言があれば、原則として法律で決められた相続分より遺言が優先します。例えば、本来は子供が相続人であるけれど、子供に多額の借金があって、相続財産が返済に充てられてしまう可能性があるとき、遺言によって、その子供の子供(つまり孫)に遺すことも考えられます。(但し、兄弟姉妹以外の相続人には「遺留分」があるので、注意が必要です)
財産の生前贈与
生前贈与は、言うまでもなく、自分が生きて元気なうちに、自分の財産を贈与することです。
遺言は、遺言書を書くという、一方的な行為ですが、贈与は、あげる人と貰う人の「契約」です。
贈与をするときに避けて通れないのが贈与税の問題です。
贈与税は通常暦年課税(毎年ごとに課税される)で、110万円を超える贈与は贈与税が発生します。
そこで考えられる一つの方法は、毎年、あるいは不規則に数年にわたって、110万円を超えない範囲で、子供や孫に財産を贈与するというものです。110万円を超えなければ原則として贈与税は発生しません。ただし、この方法によって金銭を贈与したときは、「本当は1000万円を贈与するつもりだったのを、贈与税を回避するために分割して贈与した」とみなされてしまうことがあるので、注意が必要です。金銭の他、不動産の持分を少しずつ子どもや孫に移転するという方法もあります。
そのほかに贈与したいときに利用できる特例があります。
令和3年12月31日までに、自分の子供や孫など(20歳以上)に対し、居住用の不動産を新築したり購入あるいは増改築するための資金を贈与したときは、一定の非課税限度額までの金額について贈与税が非課税となります。
この特例を受けるためには、贈与する子供や孫の所得制限や、いつまでに新築したり取得しなければならないか、などの要件があるので、実際に利用するときは専門家に相談するとよいでしょう。
また、贈与税の特例として注目が集まってきた制度に、教育資金の一括贈与があります。
特に、祖父母が孫の大学や習い事の費用を贈与するときに非課税になるということで話題になりました。これは、令和3年3月31日までの間に30歳未満の子どもや孫に教育資金に充てるための金銭などを贈与したときに、所定の手続き(申告)によって1500万円までが非課税となる制度です。
この特例にも、贈与する子供や孫の所得制限や、該当する「教育資金」の範囲が細かく決められている(当初より範囲が狭くなっています)ので、専門家や信託銀行などに相談することをお勧めします。
まとめ
遺言や、色々な特例を利用することによって、自分の大切な財産を、大切な相手に引き継ぐことが出来ます。いずれも、自分の年齢やライフプラン、財産の内容など、総合的に考える必要があるので、専門家などに相談しながら利用するようにしましょう。
この記事の著者
-
-
司法書士
秋浦 良子
-