相続
養子縁組の相続 ~相続対策は、養子縁組と遺言書どちらで対応すべきか?~
養子縁組とは(普通養子縁組を中心に!)
養子縁組には、普通養子(民法792条~817条参照)と特別養子(民法817条の2~817条の11参照)があります。
特別養子は、養子となる子供の福祉を実現するために家庭裁判所の審判で成立し、養子となる子供と実親との親子関係を終了する縁組です。例えば、実子のいないご夫婦などが、養子として15歳未満の子供を養子に迎え入れる場合などが想定されています。
今回は、15歳未満のお子様を養子に迎え入れる場合以外などさまざまな目的で用いられている普通養子に絞って解説いたします。
-普通養子の具体例
普通養子の利用目的は、配偶者の連れ子を養子としたり、相続税対策のために自分の孫を養子にしたり、自分の娘の配偶者を養子にするなどさまざまです。
養子の相続 〜 法定相続分は実子と養子で差がありません!
-養子の相続分
養子縁組の結果、養子と養親は、実子と実親と同一の親子関係が生じますので、養子は養親の相続人となります。
法定相続分についても、実子と養子では差がありません。
なお、普通養子の場合、実親との親子関係も従来とおり存続しますので、実親の相続人にもなることができます。
以下、事例に即して説明します。
死亡:X、
遺産:現金2400万円、遺言なし
【相続人】
子A、子B(養子0人)
【法定相続分に従った遺産分割】※1
子A、子B:各1200万円(法定相続分1/2)
※1 遺産分割協議等の場合、「特別受益」や「寄与分」などというものも考慮されますが、今回の事例では、事案をシンプルにし、「遺言」の有無と相続財産として「現金」以外にはないことを前提としております。以下の事例も同様となります。「特別受益」や「寄与分」については、また、別のコラムで解説いたします。
死亡:X(養子Cからみた養親)
遺産:現金2400万円、遺言なし
【相続人】
実子A、実子B、養子C
【法定相続分に従った遺産分割】
子A・子B:各800万円(法定相続分1/3)
養子C:800万円(法定相続分1/3)
上記事案によれば、実子Aと実子Bは、CがXの普通養子となると、法定相続分が2分の1から3分の1になり、Xが亡くなったときに受け取る相続財産が減少することになります。
普通養子の離縁と遺言の撤回(養子縁組解消は簡単ではない!)
有効に成立した縁組を解消する方法を離縁といいます。
原則として、養親と養子の協議により、離縁の届出をすることによって、離縁することができます(協議離縁)。逆に言いますと、養親あるいは養子から、一方的に離縁することはできません。相手方の了解がないときは、家庭裁判所の手続を取るなどしなければなりませんし、また、裁判所の手続きで必ず離縁が認められるものでもありません。
一方で、連れ子などを養子縁組しなくても、遺言によって相続財産を残すことは可能ですし、遺言作成後に遺言者の意思が変わった場合には、遺言者は、いつでも、遺言の方式にしたがって、遺言を撤回することができます(民法1022条)。つまり、遺言者の一方的な意思で遺言を残したり、他方、当該遺言を撤回することができます。遺言者の遺言能力(民法963条)や遺言の要件(民法967条以下)などは当然に必要になります。
まとめ
養子縁組をする目的や必要性は人それぞれです。
相続対策として、養子縁組をするのか、養子縁組をせずに遺言を残すのか、ご判断に悩まれることもあるかと思います。
養子縁組に関わる相続のトラブルを未然に防ぐだめにも、相続対策等で養子縁組を考えている方は、弁護士に一度ご相談することをおすすめします。
この記事の著者
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弁護士
原 直義 (はら なおよし)
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