相続
相続税
土地に係る相続税と節税の方法
目次
相続時の土地の評価方法
(1)路線価の付いている土地
相続時の土地の評価は、路線価の付いている土地は路線価で評価します。この路線価は、国税庁が公表している「路線価図・評価倍率表」(https://www.rosenka.nta.go.jp/)で調べることが出来ます。
ただし、土地の形や状況に応じて、以下のようないろいろな加算要素、減産要素があり、一般の方にとっては計算が難しい部分もありますので、正確に出したい場合は税理士等の専門家に相談する方が良いでしょう。
調整項目 | 内容 |
---|---|
奥行価格補正 | 奥行が長い、あるいは短い宅地は、その距離に応じた補正率を乗じる |
側方路線影響加算 | 側方にも道路がある宅地(角地)は利用価値が高いため、その分を加算 |
二方路線影響加算 | 正面と裏面に道路がある宅地は利用価値が高いため、その分を加算 |
間口狭小補正 | 間口の狭い宅地は、間口距離に応じた補正率により減算 |
奥行長大補正 | 奥行が間口の2倍以上になる宅地は一定の補正率により減算 |
がけ地補正 | 1割以上のがけ地がある場合は一定の補正率により減算 |
その他 | 不整形地、無道路地等の補正あり |
(2)路線価の付いていない土地
路線価の付いていない地域の土地は、固定資産税の価格に倍率をかけて計算します。この倍率も「路線価図・評価倍率表」で確認できます。固定資産税の価格は、毎年5月~6月にかけて送られてくる固定資産税の課税明細に記載されていますので、それを見れば分かります。
(3)簡便計算
土地の評価はなかなか難しいのですが、概ねの価格を知りたいのであれば、宅地であれば固定資産税の価格に1.1倍を乗じると大体の評価額が計算できます。
相続時の建物の評価方法
相続時の建物の評価は、固定資産税の価格で評価されますので、固定資産税の課税明細を見れば評価額が分かります。この評価額は、概ね時価の5~6割ぐらいになります。
節税対策1:小規模宅地等の特例を活用して土地の評価を下げる
相続時に相続税を節税するために最も効果があるのが小規模宅地の特例です。これは一定の条件を満たした宅地について、50%~80%評価額を下げる制度です。この小規模宅地の特例には、次の4種類があります。
(1)特定居住用宅地
相続開始の直前において被相続人または被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の居住の用に供されていた宅地等で、次の居住用宅地の特例判定フローチャートの要件を満たす場合に、330㎡まで宅地について80%の減額ができる特例です。
これを使えば、5000万円の宅地の評価を1000万円に下げることができます。
(2)特定事業用宅地
特定事業用宅地は相続開始の直前において被相続人または被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の事業(不動産貸付業等を除きます。)の用に供されていた宅地等で、以下の事業用宅地の特例判定フローチャートの要件を満たす場合に、400㎡まで宅地について80%の減額ができる特例です。
これを使えば、1億円の事業用宅地の評価を2000万円に下げることができます。
(3)特定同族会社事業用宅地
特定同族会社事業用宅地は相続開始の直前から相続税の申告期限まで一定の法人の事業(不動産貸付業等を除きます。)の用に供されていた宅地等で、以下の事業用宅地の特例判定フローチャートの要件を満たす場合に、400㎡まで宅地について80%の減額ができる特例です。ここで、一定の法人とは、相続開始の直前において被相続人及び被相続人の親族等が法人の発行済株式の総数又は出資の総額の50%超を有している場合におけるその法人をいいます。
(4)貸付事業用宅地等
相続開始の直前において被相続人等の事業(不動産貸付業、駐車場業、自転車駐車場業及び準事業に限ります。)の用に供されていた宅地等で、以下の事業用宅地の特例判定フローチャートの要件を満たす場合に、200㎡まで宅地について50%の減額ができる特例です。
節税対策2:「地積規模の大きな宅地の評価」を用いて土地の評価を下げる
(1)対象となる土地
土地の面積が一定以上の場合には、「地積規模の大きな宅地の評価」を用いて土地の評価を下げることができます。具体的には、三大都市圏においては500平方メートル以上の地積の宅地、三大都市圏以外の地域においては1,000平方メートル以上の地積の宅地が対象になります。
ただし、次の条件のどれかに該当する場合は対象外になりますので、注意してください。
- 市街化調整区域(都市計画法第34条第10号又は第11号の規定に基づき宅地分譲に係る同法第4条第12項に規定する開発行為を行うことができる区域を除きます。)に所在する宅地
- 都市計画法の用途地域が工業専用地域に指定されている地域に所在する宅地
- 指定容積率が400%(東京都の特別区においては300%)以上の地域に所在する宅地
- 財産評価基本通達22-2に定める大規模工場用地
(2)評価方法
具体的な評価は、路線価地域に所在する場合と倍率地域に所在する場合に分けて、以下のようになります。
①路線価地域に所在する場合
対象となるのは、地積規模の大きな宅地のうち、普通商業・併用住宅地区及び普通住宅地区に所在するものとなります。この場合の評価額は以下のようになります。
②倍率地域に所在する場合
対象となるのは、地積規模の大きな宅地です。この場合の評価額は次の2つのうち、低い価額になります。
- その宅地の固定資産税評価額に倍率を乗じて計算した価額
- その宅地が標準的な間口距離及び奥行距離を有する宅地であるとした場合の1平方メートル当たりの価額に、普通住宅地区の奥行価格補正率や不整形地補正率などの各種画地補正率のほか、規模格差補正率を乗じて求めた価額に、その宅地の地積を乗じて計算した価額
(3)規模格差補正率
上記の計算で使用する規模格差補正率は、次の算式により計算します(小数点以下第2位未満は切り捨てます。)。
上記算式中の「B」及び「C」は、地積規模の大きな宅地の所在する地域に応じて、それぞれ次に掲げる表のとおりです。
①三大都市圏に所在する宅地
地積 | 普通商業・併用住宅地区、普通住宅地区 | |
---|---|---|
B | C | |
500 以上 1,000 未満 |
0.95 | 25 |
1,000 以上 3,000 未満 |
0.90 | 75 |
3,000 以上 5,000 未満 |
0.85 | 225 |
5,000 以上 | 0.80 | 475 |
②三大都市圏以外の地域に所在する宅地
地積 | 普通商業・併用住宅地区、普通住宅地区 | |
---|---|---|
B | C | |
1,000 以上 3,000 未満 |
0.90 | 100 |
3,000 以上 5,000 未満 |
0.85 | 250 |
5,000 以上 | 0.80 | 500 |
これを使えば、三大都市圏の1億円で500㎡の土地の評価を8000万円に下げることができます。
節税対策3:宅地にアパートを建てることによる節税
(1)アパートを建てることによる節税メリット
使用していない宅地をそのままにしておくと、固定資産税がかかるだけで得なことは何もありません。そこで、多くの方は駐車場等にするなどの対策をとりますが、これも固定資産税をカバーする程度で、あまり有効な使用方法とは言えませんし、土地の評価もそれほど下がらないので、相続対策としてもあまり効果的とは言えません。そこで相続対策として多くの方が取り組むのが、遊休地にアパートやマンションを建てる方法です。
この方法は確かに多くのメリットがあります。建物の相続税上の評価は、実際建設にかかった費用の半分ぐらいになりますし、さらに借家権分が減額されますので、相続税の評価額をかなり下げることができます。しかも、毎月の収入が入りますので、収入も増えることになります。
例えば、全体で3億円の資産を持っている方が、使用していない評価額1億円の土地を持っていたとします。この土地をそのままにしておくと、1億円の評価になり、相続税は9180万円(相続人が1人の場合)になりますが、この土地に1億円でアパートを建てた(全額借入金)とすると、建物の相続税評価額は約半分になり、かつ、貸家評価になるので0.7倍になり、両方で3500万円の評価になります。また、土地の評価額も貸家建付地となり、0.79倍(借地権7割の場合)の評価になり7900万円に下がります。この結果、財産全体の評価額は2億1400万円になり、相続税は5420万円になり、相続税を3760万円節税できたことになります。
この方法は良いことだらけに見えますが、実は、この対策をとって失敗している方もたくさんいます。特にアパートの建設費に借入金を充てている場合は要注意です。アパートの入居率が悪くて、返済が出来ないような事態になると、最終的には建てたアパートと土地の両方を売却して借入金を返済するようなことになり、結果として土地を失っただけというようなことにもなります。アパート建設で相続税を節税する場合には、くれぐれもアパートの収益性にも注意して、多少空き室が発生しても借入金の返済に問題が出ないようにしてください。
節税対策4:収益不動産を購入することによる節税
空いている宅地を保有していない場合には、土地も含めた収益不動産を購入しても相続税を節税することが出来ます。時価で土地が5000万円、建物が5000万円のアパートを購入した場合、土地は相続税評価で約7割になり、かつ貸家建付地の評価になり0.79倍に出来ますので、2765万円の評価になります。建物は約半分の評価になり、かつ貸家評価で0.7倍になりますので、1750万円の評価になります。この結果1億円で購入したアパートが4515万円の評価になります。これに対して、購入したときに1億円の借入金はそのままマイナス1億円の評価になりますので、財産の評価額は5485万円減額されることになります。この結果、9180万円の相続税(3億円の財産があった場合)は、約6712万円になり、2468万円の相続税が節税出来たことになります。
この場合も重要なことは借入金の返済に問題が出ないように収益性の良い案件を選ぶことです。ただし、こちらの方が自分の土地にアパートを建てる場合よりも自由に物件を選べますので、物件の選択さえ間違わなければ、リスクはそれほど高くないと言えます。
まとめ
以上見てきたように、不動産が絡むと相続税はいろいろと節税の方法があります。リスクの大きさを考えなければ、不動産を有効に活用すれば、多くの場合相続税を0にすることが出来ます。しかし、一方でリスクがあるのも事実ですので、税金と不動産の両方の知識をしっかり持っている専門家に相談に乗ってもらうことをお薦めします。正しい知識のベースに対策を打てば、それほど大きくないリスクの元に、相続委の節税を行うことが出来ます。
この記事の著者
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税理士
落合 和雄
東京大学卒業後、一般企業を経験し、税理士・経営コンサル・システムコンサルとして活動。
相続案件の実績は多く、親切で丁寧な対応をモットーとしています。節税実績は数多く、税務調査対策にも自信があります。相続登記にも対応。ワンストップでサービスを提供しています。
東京大学卒業後、一般企業を経験し、税理士・経営コンサル・システムコンサルとして活動。
相続案件の実績は多く、親切で丁寧な対応をモットーとしています。節税実績は数多く、税務調査対策にも自信があります。相続登記にも対応。ワンストップでサービスを提供しています。 -