相続

相続人

法定相続人の範囲と相続順位

法定相続人の範囲と相続順位

目次

法定相続人とは

相続は、人の死亡によって、その死亡のときに開始し、民法によって定められた人が死亡した人の相続財産(遺産)を承継します。相続財産には、権利(預貯金や不動産など)だけではなく、義務(借入金や未払金など)も含まれます。

民法では、死亡した人のことを被相続人、相続財産を承継するべき人を相続人といいます。なお、相続人が複数いる場合は、それらの相続人を総称して共同相続人といいます。

今回は、現行法の民法が適用される、昭和56年1月1日以降に被相続人が死亡した場合について解説していきます。

check死亡とは?

死亡には、いわゆる自然死失踪宣告に基づく擬制的な死亡の二つがあります。

失踪宣告とは、不在者(従来の住所又は居所を去り、容易に戻る見込みのない者)につき、その生死が7年間明らかでないとき普通失踪)、又は戦争、船舶の沈没、震災などの死亡の原因となる危難に遭遇しその危難が去った後、その生死が1年間明らかでないとき危難失踪)に、不在者の親族等の利害関係人が、家庭裁判所に対して、不在者を既に死亡したものとみなし、相続を開始させることを求めて行われる審判のことをいいます。

法定相続人の範囲と相続順位

民法には、誰が相続人となるのかについて、その範囲優先順位が定められていますので、確認していきましょう。

第1順位の相続人

被相続人のが第1順位の相続人となります。実子養子嫡出子(法律上の婚姻関係にある男女の間に生まれた子)と非嫡出子(法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子)との区別はありません。また、子が数人いる場合は、その子らが共同で相続人となります。

胎児については、民法では、「胎児は、相続については、すでに生まれたものとみなす」とされていますので、胎児も相続人となれますが、「胎児が死体で生まれたとき」は、被相続人の相続開始時には相続人でなかったものとされます。

相続人となるべき者(子)が死亡している場合

相続人となるべき者(子)が、被相続人の相続開始以前(同時に死亡した場合を含む)に死亡している場合

相続人となるべき者(子)に子がいる場合は、その相続人となるべき者(子)の子(被相続人の孫)が代わりに相続人となります(代襲相続人といいます)。代襲相続人も、上記同様、実子養子嫡出子非嫡出子との区別はありませんし、子が数人いる場合は、その子らが共同で代襲相続人となります。

さらに、代襲相続人も被相続人の相続開始以前同時に死亡した場合を含む)に死亡している場合は、代襲相続人に子がいる場合は、その代襲相続人の子(被相続人のひ孫)が代わりに相続人となります(再代襲相続人といいます)。

なお、再代襲相続人も被相続人の相続開始以前同時に死亡した場合を含む)に死亡している場合は、再代襲相続人に子がいる場合は、その代襲相続人の子(被相続人の玄孫)が代わりに相続人となります(再々代襲相続人といいます)。

一方、相続人となるべき者(子)に子がいない場合は、その相続人となるべき者(子)やその者の相続人は、被相続人の相続人にならず、相続を受けることはありません。

()代襲相続人となるための条件

(再)代襲相続人として認められるためには、被相続人の直系卑属(家系図で見て縦の血族関係にある子や孫など)である必要があり、直系卑属でない者は、(再)代襲相続人にはなれません。

 

例えば、被相続人の養子が養子縁組前に産んでいた子は、被相続人との関係では直系卑属には当たらないため、原則として代襲相続人にはなれません。(ただし、後記【check参照)

check☝ 養子縁組前に産まれた子が代襲相続人となる場合

右の図において、Eは、養親Aと養子Cの養子縁組前に生まれた子ですので、Aの直系卑属に当たらず、

Aの代襲相続人とならないように思われます。

しかし、EはAの実子Dの実子ですので、AとDとの関係からみれば、Aの直系卑属に当たります

判例では、Eが亡Cの直系卑属であり、かつDとの関係でAの直系卑属に当たる場合には、Aの相続に

おいて、Eは亡Cの代襲者としてAの遺産につき相続権がある旨を判示しました。

(大阪高裁平元8.10判決)(判例タイムズ708222頁)

相続人となるべき者(子)が、被相続人の相続開始後に死亡している場合

相続人となるべき者(子)は、被相続人の相続開始時には生存していましたので、当然に相続人となります。したがって、その子は生前中にいったん被相続人の相続を受けた後、その子が死亡した際に、被相続人から承継した権利義務(相続権)を、その子の相続人が相続により承継することとなります。

相続人となるべき者(子)が相続放棄をした場合

相続放棄は、相続人が被相続人の相続開始を知った時から3ヶ月以内に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てて行うのですが、その結果、その者(子)は最初から被相続人の相続人ではなかったとみなされ、相続権を失います。(なお、このような裁判の手続を経ず、結果的に相続を受けなかったことに対して、「相続放棄をした」と耳にすることもありますが、法律的には相続放棄とは異なります。)

このように、相続人となるべき者(子)の一部が相続放棄をした場合は、その子以外の子のみが相続人となり、相続人となるべき者(子)の全員が相続放棄をした場合は、被相続人の子がいなかった場合と同様に、次の順位(子の場合は直系尊属)の者が相続人となり、相続を受けることとなります。

つまり、死亡した場合と異なり、その子の子や孫が(再)代襲相続人となったり、その子の相続人が被相続人の相続権を承継することはありません

このような相続放棄の取扱いは、第2順位、第3順位の相続人に関しても変わりません。

第2順位の相続人

子が一人もなく(すべての子が相続放棄をした場合を含みます)、かつ(再)代襲相続人もいない場合は、被相続人の直系尊属(家系図で見て縦の血族関係にある父母養父母を含みます)や祖父母など)が相続人となります。なお、父母のように親等が同じ者が数人いる場合は共同で相続人となり、母と父方の祖母のように親等の異なった者がいる場合は親等が近い者(母)が優先されます。

第3順位の相続人

第2順位の相続人もいない場合は、被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。

父母の双方を同じくする者と父母の一方だけを同じくする者(腹違いの兄弟など)との区別はありません(ただし、これらの者の間で相続分が異なる点については後で説明します)。

また、兄と妹のように兄弟姉妹が数人いる場合は共同で相続人となります。

相続人となるべき者(兄弟姉妹)が死亡している場合

相続人となるべき者(兄弟姉妹)が、被相続人の相続開始以前(同時に死亡した場合を含む)に死亡している場合

相続人となるべき者(兄弟姉妹)に子がいる場合は、その相続人となるべき者(兄弟姉妹)の子(被相続人の甥姪)代襲相続人となります。第1順位の子が相続人である場合と同じく、実子養子嫡出子非嫡出子との区別はありませんし、子が数人いる場合は、その子らが共同で代襲相続人となります。

ただし、第1順位の子が相続人である場合と異なり、兄弟姉妹には再代襲相続の規定がありませんので、代襲相続人も被相続人の相続開始以前同時に死亡した場合を含む)に死亡している場合は、代襲相続人の子や孫は、被相続人の相続人にならず、相続を受けることはありません

相続人となるべき者(兄弟姉妹)が、被相続人の相続開始後に死亡している場合

相続人となるべき者(兄弟姉妹)は、被相続人の相続開始時には生存していましたので、当然に相続人となります。したがって、その者は生前中にいったん被相続人の相続を受け、その後その者が死亡した際に、被相続人から承継した権利義務(相続権)を、その者の相続人が相続により承継することとなります。

相続人となるべき者(兄弟姉妹)が相続放棄をした場合

相続放棄の手続は、前述(【第1順位の相続人】の2参照)したとおりですが、相続人となるべき者(兄弟姉妹)の一部が相続放棄をした場合は、その者以外の兄弟姉妹のみが相続人となり、相続人となるべき者(兄弟姉妹)の全員が相続放棄をした場合は、被相続人の兄弟姉妹がいなかった場合と同様となり、配偶者がいれば配偶者のみが相続人となり、相続を受けることとなります。しかし、配偶者もいない場合は、相続人がいなくなり、誰も相続を受けることはありません。(後述する「相続人がいない場合」を参照)

なお、死亡した場合と異なり、その者の子が代襲相続人となったり、その者の相続人が被相続人の相続権を承継しないことについては、子の場合と同様です。配偶者

被相続人の配偶者は常に相続人となります。つまり、第1順位から第3順位により相続人となるべき者がいるときは、その者と同順位で共同相続人となり、それらの者がいないときは、単独で相続人となります。

なお、この場合における各相続人の相続分については、後述する「法定相続人と法定相続分」において説明します。

相続人になれない者

民法には、法定の事由に該当する相続人について、法定相続人から除外相続権を剥奪)させる規定がありますので、確認していきましょう。

相続欠格

相続人が、下記の各号に規定された違法行為を行った場合は、当然に相続権を剥奪されます

ただし、相続欠格は代襲相続の対象となるため、前述(【第1順位の相続人】の1、【第3順位の相続人】の1参照)したとおり、その者の子らがいる場合は、その子らが代襲相続人等となります。

相続欠格事由

  1. 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
  2. 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
  3. 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
  4. 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
  5. 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

相続人廃除

遺留分を有する推定相続人(第3順位の兄弟姉妹を除く相続人)が、下記に規定された行為を行った場合、被相続人は、その推定相続人の相続権を剥奪させるよう家庭裁判所に請求することができます

なお、相続人廃除は、遺言でも意思表示をすることができますが、この場合は、遺言執行者は、その遺言が効力を生じた後、遅滞なく、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求しなければなりません。この場合において、その推定相続人の廃除は、被相続人の死亡の時にさかのぼってその効力を生じます。

ただし、相続人廃除は代襲相続の対象となるため、前述(【第1順位の相続人】の1、【第3順位の相続人】の1参照)したとおり、その者の子らがいる場合は、その子らが代襲相続人等となります。

相続人廃除事由

  1. 被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき
  2. 推定相続人にその他の著しい非行があったとき

相続人がいない場合

民法には、相続人がいない場合の手続について規定がありますので、確認していきましょう。

相続財産管理人の選任

相続人がいることが明らかでないとき、相続財産は法人となります

そして、家庭裁判所は、利害関係人等(相続債権者、特定遺贈の受遺者、相続財産の分与を請求する者など)の請求により、相続財産管理人を選任し、相続財産管理人は、相続人を捜索しながら、相続債権者・受遺者等に対して、相続財産を管理・清算します。

特別縁故者への財産分与

一定の期間が満了しても、なお相続人としての権利を主張する者がいない場合は、相続人や相続財産管理人に知れなかった相続債権者・受遺者は、もはやその権利を行使することができません。

その場合、家庭裁判所は、相当と認めるときは、「被相続人と生計を同じくしていた者」、「被相続人の療養看護に努めた者」その他「被相続人と特別の縁故があった者」の請求により、これらの者に対し、清算後に残存する相続財産の全部または一部を分与することができます

check 被相続人と「特別の縁故」があった者とは

民法958条の3に規定する「特別縁故者」については、最終的には家庭裁判所の判断に任されていますが、ただ単に被相続人と親族関係にあるだけでは足りず、「被相続人と生計を同じくしていた者」や「被相続人の療養看護に努めた者」に準ずる程度の交流があったことを必要とします

具体的には、長年にわたり生計を援助していた親族や友人、親子や兄弟のように親しくしていた親族や友人などが挙げられますが、被相続人の死後に葬儀を執り行い、遺産を管理していただけの者は、特別縁故者としては認められないでしょう。

共有者への帰属

2の財産分与がなかった場合、あるいは、2の財産分与後もなお処分されなかった相続財産の内、共有物であるものについては、被相続人の共有持分は、他の共有者に帰属します

国庫への帰属

以上の清算手続においても、なお清算がなされず、処分されなかった相続財産については、国庫に帰属することになります。

法定相続人と法定相続分

前記「法定相続人の範囲と相続順位」によって、同順位の相続人が数人いることとなった場合、各相続人が受ける相続分はケースによって異なりますので、以下、具体的に説明していきます。

配偶者と子が相続人となる場合

配偶者の相続分と子の相続分はそれぞれ2分の1となります。

子が数人いる場合は、各人の相続分は均等に分けられます。

なお、代襲相続人等の相続分については後述します。

check 嫡出子と非嫡出子の相続分

従前、非嫡出子の相続分は嫡出子の相続分の2分の1とされていましたが、平成25年9月4日、最高裁判所において言い渡された判決により、同規定は「法の下の平等」を保障した憲法第14条1項に違反して違憲であり無効とする、と判断され、平成25年12月11日の改正により、非嫡出子と嫡出子の相続分は同一となりました。(この規定は、平成25年9月5日以後に開始した相続について適用するとされています)

配偶者と直系尊属が相続人となる場合

配偶者の相続分は3分の2で、直系尊属の相続分は3分の1となります。

直系尊属が数人いる場合は、各人の相続分は均等に分けられます。

配偶者と兄弟姉妹が相続人となる場合

配偶者の相続分は4分の3で、兄弟姉妹の相続分は4分の1となります。

兄弟姉妹が数人いる場合は、原則として各人の相続分は均等に分けられますが、子の場合と異なり、父母の一方だけを同じくする者は、父母の双方を同じくする者の相続分の2分の1となります

代襲相続人の相続分

子や兄弟姉妹に(再)代襲相続人がいる場合、その(再)代襲相続人の相続分は、本来その者の(祖)父母等が受ける予定であった相続分と同じです。

(再)代襲相続人が数人いる場合は、原則として各人の相続分は均等に分けられます。(例外について【配偶者と兄弟姉妹が相続人となる場合】参照)

check家督相続について

昭和22年5月2日までの間に相続が開始した場合は、旧民法が適用されます。

旧民法においては、戸主(同一家族を統率する者)の相続が開始した場合、家督相続という制度により、特定の者(「家督相続人」といいます。)が単独ですべての財産を承継していました

わが国の相続法は、昭和22年5月3日の日本国憲法の施行に伴い、昭和23年1月1日に施行された現行法によって、「家」や「戸主」の制度が撤廃され「家督相続」がなくなりました。

法定相続人の特定(証明)方法

法定相続人を特定(証明)するためには、まず被相続人の出生から死亡までの間のすべての「(除)籍謄本」や「改製原戸籍謄本」を取得する必要があります

具体的には、被相続人の本籍地を管轄する市区町村役場において、被相続人の相続開始時の「戸(除)籍謄本」を取得し、その後、順次従前の「戸(除)籍謄本」や「改製原戸籍謄本」を取得していくことになるのですが、本籍地が遠方にある場合など、市区町村役場に出向くことが難しい場合は郵送にて取得することも可能です

次に、相続人となるべき者の「戸籍謄本」等も取得する必要がありますが、被相続人の兄弟姉妹が相続人となる場合には、さらに被相続人の両親についても、それぞれ出生から死亡までの間のすべての「戸(除)籍謄本」や「改製原戸籍謄本」を取得する必要がありますし、相続人となるべき者が死亡している場合には、その者の出生から死亡までの間のすべての「戸(除)籍謄本」や「改製原戸籍謄本」を取得する必要がありますので、あわせて取得しましょう。

まとめ

以上のとおり、法定相続人の範囲を特定するためには、戸(除)籍謄本等を取り寄せたり、その記載内容を読み取る必要がありますが、専門家を除いて、これらのことに精通されている方はほとんどいないでしょう。

ましてや、相続に関する民法の規定を十分理解し、相続人や相続分を具体的に確定させ、間違いなく相続手続を進めることはとても困難なことですので、相続が発生した際には、司法書士や弁護士などの専門家に相談し、どのような手続が必要なのか、また、その手続のためにどのような書類が必要なのかなどについて、早めにアドバイスを受けることをお勧めします。

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