不動産評価額

相続税における不動産評価額の調べ方と評価額を減額できるケース

不動産評価額の調べ方には、どのような方法があるのでしょうか?また、実際に評価額を計算していく中で、ケースによっては評価額を下げることができる場合もあるようです。

今回は、それらを見ていきたいと思います。

 

5つの不動産評価額

土地や建物などの不動産の評価額は、見る人や価値を算出する目的によって異なってきます。例えば、相続税を知りたい時と売却価格を調べる時では異なる評価額を用いられます。

不動産評価額の求め方には、次の5つの方法があります。

① 固定資産税評価額

固定資産税評価額とは、固定資産税を払う元となる評価額のこと。

この固定資産税評価額の調べ方には主に3つの方法があります。

  • 固定資産税の納税通知書を確認する
  • 固定資産税評価証明書を取得する
  • 固定資産税台帳を閲覧する

 

最も簡単に調べられるのが、(1)の「固定資産税の納税通知書を確認する」です。固定資産税の納税通知書は、毎年4月から6月ごろに役所から送られてくるもので、こちらの課税証明書の価格または評価額の欄に、固定資産税評価額が書かれています。

 

② 公示地価

③ 基準地価

公示地価とは、国土交通省の土地鑑定委員会が地価公示法に則って定めた地点(標準地)1平米あたりの土地の価格のことで、基準地価とは、公示地価の発表から半年後に、一年間の地価の動きを明確にするために算定される土地の価格のことです。

 

公示地価基準地価は、国土交通省が運営する「土地総合情報システム」にある「国土交通省地価公示」から検索することが可能です。都道府県から市区町村へ徐々に絞り込んでいきます。

そのほか、一般財団法人資産評価システム研究センターが運営する「全国地価マップ」でも同様に検索できます。ただし、全国地価マップは、独自のデータが掲載されているので、国土交通省のデータとは金額に差がある場合がありますので注意が必要です。

 

④ 路線価

路線価とは、道路に面している土地の1平米あたりの評価額のこと。

路線価は、国税庁ホームページにも掲載されている「路線価図・評価倍率表」で調べることができます。自分の所有する不動産の住所をあてはめてみると、道路に「1平米あたりいくら」と書かれています。

 

⑤ 実勢価格

実勢価格とは、普通に不動産を売却するときの価格で、自分の家の近隣ではどのくらいの価格で不動産の取引がされているのかを示しています

売却を検討している時など、自分の所有する不動産がいくらで売れるのかを知りたい場合に実勢価格を調べるのなら、一番簡単な方法は不動産の一括査定サービスです。一括査定であれば、複数の不動産会社から査定見積もりを取り寄せることができますので、それぞれを比較しながら正確な相場を知ることができます。

 

また、実勢価格は固定資産税評価額から計算することもできます。

固定資産税評価額は不動産売買の実勢価格の70%程度と言われていますので、

 

売り出し価格 = 固定資産税評価額 ÷ 0.70

 

でおおよその値を求められます。

 

相続の際に利用される不動産評価額

この中で、相続の時に利用する評価額は、①の固定資産税評価額と④の路線価です

それでは、どのようにして、相続における不動産評価額を求めるのでしょうか。

 

戸建ての場合

戸建ての場合、土地と建物それぞれの評価額を合わせたものが不動産評価額の総額となります。

建物の部分に関しては、先述の固定資産税評価額になりますので、普通の家庭の場合などは固定資産税の納税通知書を見れば、そこに評価額が記載されています。

土地に関しては、自分の家の近くの道路に面した土地の路線価を国税庁のホームページから調べて、そこに例えば30万円と書かれていれば、1平米が30万円ということなので、仮に100平米の土地ならば、

30万円×100平米=3,000万円

と求められます。

ただ、これは、市街地など路線価が決められている場合の方法で、郊外になると、路線価が記載されていない場所も出てきます。

そういった場合には、倍率方式という方法で評価額を求めることになります。

国税庁のホームページを見ると、1.2とか1.3のように、調べたい不動産のあるエリアのところの倍率が記載されています。それを自分の元々の固定資産税評価額にかけると、その土地の不動産評価額となります。

 

固定資産税評価額×そのエリアの倍率=その土地の不動産評価額

 

建物と土地の評価額の合計が戸建ての不動産評価額になりますので、

500万円+3,000万円=3,500万円

となります。

マンションの場合

マンションの場合も、建物と土地それぞれの評価額を合わせたものが不動産評価額の総額となるのは同じです。

建物は、占有している部分についての評価額となり、戸建ての場合と同様に固定資産税評価額を見て確認します。

土地に関しては、マンション全体の土地ではなくて、自分の敷地権の分という形になっていて、例えば10万分の3,800など、土地と建物を紐づいた形で、あなたの敷地権は全体の何分のいくつですと書かれています。ですから、マンションの場合の土地の評価額は

マンション全体の土地の評価額×敷地権割合

で求めることができます。

そして、戸建ての場合と同様に建物と土地の評価額を合わせれば、不動産評価額の総額となります。

相続の際に不動産評価額が減額されるケース

 

ですが、これらの評価額の計算はあくまでもおおよその値を知るためのもので、実際には細かな補正がなされます。そのうちのいくつかの例をあげてみましょう。

建物の場合

建物を自宅として用いるのではなく、賃貸アパートにしていたり第三者に貸したりするなどの場合、建物の評価額が減額されることになっています。

第三者に貸している時の計算式は

固定資産税評価額×(1-借家権割合)

です。

この借家権割合とは、借り手が家屋を借りて使用する権利のことで、その割合は30%と決まっています。

また、賃貸アパートの場合は

固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)

です。

賃貸割合とは、貸している部分の床面積の割合のことです。したがって、アパート内に空室が少ないほど割合は大きくなり、評価額を下げることができます。

ですから、建物の相続税評価額を下げて節税を考える場合は、第三者に貸したり、賃貸アパートの空室を減らしたりすることが対策となります。

 

土地の場合

借地権を相続する場合の補正

建物が故人の所有する土地に建っているのではなく、借りている土地に建っている場合、相続は建物だけではなくその土地を借りる権利すなわち借地権も含まれてきます。

借地として借りている土地の権利は、土地の所有者である地主が持っている底地と、借りている人の借地権のある借地に分けることができます。この借地がその土地の権利のうちの何割を占めるかを表しているのが借地権割合というものです。

借地権の相続税評価額を計算する際には、この借地権割合を使用します。借地権割合は、国税庁が30~90%(10%刻み)で定めていますが、地域によって異なり、一般的には土地の利用価値で決まります。繁華街や大きな駅の周辺などは借地権割合が高く、郊外のあまり建物が建っていない地域では借地権割合が定められていない場合もあります。これは、たとえ借地があっても、権利としては評価しないということを意味します。

借地権割合は、路線価の数字の後ろに書かれたアルファベットで表しています。路線価のアルファベットには、A~Gまであり、A:90、B:80、C:70、D:60、E:50、F:40、G:30(それぞれ%)となっています。つまり、路線価の後ろにDと書かれていたら、借地権割合が60%という意味になります。

借地権の相続税評価額は、路線価×借地権割合で求めることができ、100%自分の所有である土地に比べると、評価額が下がります。

補正率による路線価の補正

土地は、それぞれ形が違います。真四角な土地もあれば、縦や横に長い土地もあります。ですが、やはり正方形の土地や、角地といって端っこの土地のほうが建物を建てやすいかと思います。

また、道路と道路が面しているところだと両方から出られて使い勝手がいいですが、旗竿地のような奥まったところではそうでなかったりします。そういった旗竿地の土地を持つ人と四角の土地を持っている人で、評価額が同じというのは不公平感が出ます。

なので、その土地の相続税を評価するときは、使い勝手のいい土地は何%かアップしましょう、ちょっと生活するのに大変だろうとか、普通の市場価格から見ても値段が下がるだろうと思われる土地に関しては、補正率を用いて評価額を下げましょうといったことが行われます。道路から土地までの奥行距離に応じて路線価を補正する奥行価格補正率や、間口の狭い土地であったり、間口に対して奥行きが非常に長い土地であったり、形が悪い土地であったりなど評価対象地が標準的な宅地の形状をしていない時に路線価を補正する不整形地補正率などがあります。

 

私道にしか面していない土地

宅地を評価しようとしたら、前面道路が私道で路線価地域なのに路線価が付けられていないという場合もあります。このような路線価のない私道にしか面していない土地の評価の仕方のひとつとしては、その私道を土地全体に含めて考える方法があります。つまり、私道を、自分の土地の中に建物が建っているところにある通路として考えるイメージです。

私道部分も、通常通りに何平米あるか確認したのち、路線価と平米数をかけて評価額を求めることができますが、普通に建物を建てられる土地と同じ価値というのもイメージが違いますので、私道の部分の評価額は減らすという方法をとります。

ただし、自分で計算しようと思うときの一番の問題点は、用いる補正率によって評価額の数字が大きく変わってきてしまうところにあります。相続税をなるべく納付しないように補正率を掛け過ぎてあまりにも評価額が減ってしまうということが起こりがちですので、ここはやはり専門家や税理士さんにお願いしたほうがいいでしょう。

小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例とは、一定の要件を満たすと土地の相続税評価額を最大80%減額できる制度のこと。対象となる土地には次の3種類があります。

  • 特定居住用宅地等 住宅として用いていた土地
  • 特定事業用宅地等 事業で用いていた土地
  • 貸付事業用宅地等 不動産貸付に用いられていた土地

 

① 特定居住用宅地等

特定居住用宅地等とは住宅として用いられていた土地のことです。故人や、故人が生計を共にしていた親族が、住宅として用いていた土地がこの特例の対象になります。この「生計を共にしていた」とは経済的にひとつのまとまりであることを意味しており、必ずしも同居している必要はありません。別の場所で生活していたとしても、仕送りなどをしている場合は生計を共にしていたとみなされます。

例えば父親が持っている土地に家族で暮らしていた時に、父親が亡くなって相続税がかかると、稼ぎ頭が亡くなった上にさらに高額の相続税がかかることになり、残された家族の生活が守られないことになります。そういった家族の生活を守るために、土地の評価額が1億円の場合は20%の評価額すなわち2,000万円として、その分納める税金を減額してくれる制度です。

 

② 特定事業用宅地等

特定事業用宅地等とは、事業で用いられていた土地のこと。故人や故人と生計を共にしていた親族が、事業で用いていた土地が対象になります。

①と同様に、例えば八百屋さんをしていた父親が亡くなり息子があとを引き継ぐ場合、そこで税金を多くとられてしまうと事業が成り立たなくなってしまうので評価額を下げましょうという制度です。

また、駐車場の場合、土地にアスファルトで舗装したり屋根をつけたりしていれば、すぐそこを切り替えて建物を建てることはできないので、そういった場合も普通の土地とは異なりますので、評価額は下げましょうとなります。したがって、青空駐車場にしておくよりも、きちんと整備した駐車場にしておくほうが節税対策となります。

 

③ 貸付事業用宅地等

貸付事業用宅地等とは、不動産貸付業に用いられていた土地のこと。故人や故人と生計を共にしていた親族が、その土地の上に賃貸アパートを建てたりするなどの不動産貸付業に用いていた土地が対象です。駐車場や駐輪場であっても、敷地上に構築物がある場合には小規模宅地等の特例の対象になります。

 

まとめ

相続する不動産の評価額は、自分で調べるのはとても難しいものです。また、調べて得た知識が今でも使えるものかはわかりません。法改正などで変わっていることも十分考えられます。おおよその値ならば目安として知っておいてもいいかと思いますが、実際に確かな数値を必要とするときは、決して素人判断をせず、必ず専門家や税理士にお任せしたほうがよいでしょう。

 

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この記事の著者

  • 岡山 司

    司法書士

    岡山 司

    事務所理念

    “超高齢社会への貢献”

    法務サービスにとらわれず複合的で新しいサービスを提供することで、超高齢社会の生活を安心安全にしていく

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