遺言書 種類 

秘密証書遺言

秘密証書遺言とは?秘密にできるものなのか?公正証書遺言などとの違いを解説

自分の死後、自分の財産を家族や親せきの誰にどのくらい残したい場合、生前に『遺言書』を書き残す必要があります。ですが、遺言書の内容もしくはその存在さえも、できれば生前は誰にも知られたくない、秘密にしたいと思われる方も少なくないようです。

遺言書には様々な種類がありますが、その中に『秘密証書遺言』というものがあり、これならもしかして内容などを秘密にしておける遺言書なのでは?と思わるかもしれません。

そこで今回は、秘密証書遺言とはどういうものなのか、内容を秘密にできるのかなどを徹底解説していきたいと思います。

遺言書の書き方にはどんな種類があるの?

遺言書の書き方には、普通方式特別方式とがあります。

通常の遺言書は普通方式ですが、緊急時の遺言書を特別方式といいます

特別方式には病気やけが、遭難などの事情で死期が迫ってきているときに利用できる『危急時遺言』。伝染病や乗船中などの事情により、一般社会や陸地から離れたところにいる人が利用できる『遠隔地遺言』とがありますが、これらは特別な場合のものなので、通常はほとんど作成されることはありません。

普通方式には、自筆証書遺言公正証書遺言秘密証書遺言があります。

これらの特徴は、次のとおりです。

自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、遺言者が全文を自筆で書く遺言書です。タイトル、本文、日付、署名押印などすべてを自筆で書かなくてはならず、パソコンや代書による作成はできません(財産目録等はパソコン等での印字も可)。完成させた遺言書は、基本的に自分で保管しなくてはなりませんが、2020年7月から法務局での保管制度がスタートしました。

公正証書遺言

公正証書遺言とは、公証人に遺言の内容を述べて、公正証書を作成してもらう遺言書です。原本を公証役場に保管してもらえるので、遺言書の紛失や偽造の心配がありません。

秘密証書遺言

秘密証書遺言とは、遺言書の内容を秘密にしたまま存在だけを公証役場で証明してもらう遺言書のことをいいます。

自分で作成した遺言書に封をして公証役場に持参し、公証人と2人の証人の前で自分の遺言書であることを証明してもらった後で持ち帰り、自分で保管します。

遺言書の内容を秘密にしたいときは、秘密証書遺言がいいの?

それでは、遺言書の内容などを秘密にしたい場合は、秘密証書遺言を選べばいいのでしょうか?

名前の通り、秘密証書遺言は遺言書の内容を完全に秘密にして作成し、公証役場では遺言書が存在するということだけを証明するものなので、完全に秘密にできるというメリットがあります。ですが、内容を完全に自分だけで作成しますので、法的に有効なものになっているか確認されることはできません。

場合によっては、遺言の形式を守れていなかったり、誰にどんな財産を残すのかが不明瞭で曖昧な文章になってしまったままになっていたりします。せっかく遺言書を残したつもりでも無効になってしまうこともありえます

公正証書遺言であれば、専門家である公証人に作成してもらえるため後で無効になるという心配はほぼあり得ません。専門家には仕事をするにあたって守秘義務が法律で定められていますから、その内容が漏れるという可能性はありません

いくら内容を秘密にしたとしても、秘密証書遺言と自筆証書遺言の場合、保管は自分でしなければなりません。その保管がずさんな場合、誰かに簡単に見つかってしまう可能性は十分にあります。実際、自筆証書遺言が改ざんさせるなどのトラブルは後をたちません。かといって、全く人に知られないように保管すると、死後全く発見されないという事態も起こりえます。自筆証書遺言の場合、法務局に保管してもらうという方法もあるのですが、この場合でも、法務局の職員には守秘義務がありますから、内容が漏れることはまず考えられません。

 

公正証書遺言の場合、正本と謄本は自分で保管が原則ですが、原本は公証役場で保管なので改ざんされるなどの心配は一切ありません。

上記の通り、秘密証書遺言に限らず、公正証書遺言にしたとしても遺言書の内容を秘密にすることはできます

遺言書の保管について

秘密証書遺言や自筆証書遺言は保管を自分でしなければならないので、内容どころかその存在自体を周りの人に知られていない場合、死後に遺言書自体が発見されないといった事態も起こりえます

 

事前に手続きは必要ですが、自筆証書遺言を法務局で保管してもらう場合、遺言書を法務局で保管していることを死亡時に通知してもらうことができるようになっています。この場合、通知してもらう人は、だれか親族1人から選んでもいいし、遺言執行者でも構いません。

遺言執行者とは、遺言の内容を実現する人のことで、例えば、不動産の名義を変更したり金融資産預貯金を解約したりして、遺言書の内容通りに相続人に分配する人のこと。弁護士や司法書士、信託銀行などが選ばれるが、法律で特に資格が定められているわけではない。

 

公正証書遺言の場合は死亡時に通知は来ませんが、公証役場には、公正証書で作成された遺言書の有無を検索するシステムがあり、相続人か利害関係人であれば全国どこからでも遺言者と離れた場所に住んでいても調べることができます。

まとめ:一番おすすめは公正証書遺言

以上のことを考慮して、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言を比べてみると、公正証書遺言が一番おすすめのものといえるでしょう。先に述べた自筆証書遺言の法務局での保管制度については、始まってからまだあまり時間が経っていないので、実際の運用には不明な部分も残っています。安全確実に作成することを考えたら、公正証書遺言が一番ではないでしょうか?

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この記事の著者

  • かもめ総合司法書士事務所 日永田 一憲

    司法書士

    日永田 一憲

    千葉県出身。日本大学卒業後、広告代理店を経て、司法書士事務所に勤務。2009年にかもめ総合司法書士事務所を開業しました。
    開業後、これまでに500件以上の相談実績があります。不動産登記、相続の銀行対応、遺言書作成を対応。税理士・弁護士・遺品整理・不動産会社とも提携しています。

    当事務所HP
    https://www.kamomesouzoku.com/

    千葉県出身。日本大学卒業後、広告代理店を経て、司法書士事務所に勤務。2009年にかもめ総合司法書士事務所を開業しました。
    開業後、これまでに500件以上の相談実績があります。不動産登記、相続の銀行対応、遺言書作成を対応。税理士・弁護士・遺品整理・不動産会社とも提携しています。

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