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遺言書を法務局で保管して貰う方法

自分が死んだあとのことを託すために、あるいは揉め事を避けるために遺言書を残しておくのは大切なことです。そんな遺言書、書き方や内容は勿論ですが、保管場所にも気をつける必要があります。今回は、遺言書の保管場所として法務局が利用できるということを紹介していきます。

 

一般的な遺言書の保管方法

遺言書って、いったいどのようにして保管されているのでしょうか。遺言書と言っても大きく分けると3つあります。公正証書遺言、秘密証書遺言そして自筆証書遺言です。この中でも公正証書遺言は、同じものが公証役場に保管されていますから、普段の保管場所に神経を使うことはないかもしれません。が、残りの2つについては、自分で保管場所を考えなければいけないことになります。では、保管場所としては、どのようなところが考えられるのでしょうか。例えば次のようなものを思い浮かべられるのではないでしょうか。

・自宅保管

・弁護士保管

あとは、銀行の貸金庫とかもあるかもしれませんね。また、信託銀行で相続全般をサポートしてもらう場合等に利用する「遺言信託」といったものもあります。そして、それぞれにメリット、デメリットがあります。例えば、自宅で保管する場合、誰かに見られてしまわないかとか、改ざんや破棄されたりしないか、あるいは誰も見つけてくれないといったことも心配です。また弁護士に保管してもらう場合は、そもそもその弁護士に遺言書を預けていることを相続人が知らなかったということも危惧されます。また、遺言書を託された弁護士さんが亡くなってしまわれたりすることもあるかもしれません。

そして、公正証書遺言の場合は、保管には最も安全で確実な方法と言えますが、費用や手間暇がかかるのが難点です。この場合も相続人が遺言書の存在を知らないケースもありえます。

法務局の遺言書保管制度の概要

先ほど紹介したようにこれまでの遺言書の保管方法には、それぞれ一長一短がありました。そこで、制度化されたのが、法務局での遺言書保管制度です。超のつくような高齢化社会が到来する中、相続に関するトラブルを避けるため、相続法が改正され、2020年7月から、遺言書の保管場所として法務局が追加されたのでした。この場合、保管して貰えるのは、自筆証書遺言です。各地方法務局に遺言保管所が設けられ、遺言保管官が配置されました。そして、自筆証書遺言書の原本を保管してもらえるようになりました。

法務局で遺言書を保管してもらうには?

では、具体的に法務局で遺言書を保管してもらうにはどのようにすればいいのでしょうか。

まず、保管の申請ですが、次の法務局で行うことになります。

・遺言者の住所地又は本籍地

・遺言者が所有する不動産の所在地の管轄

また、遺言者自らが申請に行くことが必要となります。その際には、本人確認の書類も必要となります。勿論、遺言書は所定の要件を満たしたものであることが大切です。

遺言書原本と併せて画像データー等の遺言書に関する情報が保管されることになります。

保管された遺言書は、遺言者が生きている間は他の者は見ることが出来ませんが、遺言者が亡くなってからは、相続人や受遺者と呼ばれる遺言によって遺産をもらい受ける人は、遺言書原本の閲覧や遺言書情報証明書の交付を申請することができます。

法務局で保管してもらうメリット、デメリット

法務局で遺言書を保管してもらうとどのようなメリット、デメリットがあるのでしょうか。まずは、メリットから見ていきますが次のようなことをあげることができます。

・遺言書の紛失や不明といった事態を避けることができる。

・生前に遺言書を誰かが手にすることを防げ、改ざんや破棄、隠蔽といった事態を心配する必要がなくなる。

・法務局で遺言書の形式についてチェックしてもらえるので、遺言書が無効になるといったことがない。

 

続いて、デメリットです。

・自分で法務局まで出向く必要がある。

・手数料がかかる。

・遺言書が法務局で保管されていることを知らせておかなければ、相続人が遺言書の存在自体に気づかない。

 

法務局保管と公正証書遺言の比較

今度は、法務局と同じような公証役場で保管してもらう公正証書遺言と較べるとどうでしょうか。法務局で遺言書を保管してもらうメリットは、

・公正証書遺言に較べて手間がかからない。

・手数料が少ない。

といったことがあります。

 

デメリットとして、次のようなものがあります。

・遺言書を自分で作成しなければならない。

・該当する法務局まで遺言者自らが出向かなければいけない。代理申請や保管官が公正証書遺言のように出張してくれることはない。

 

まとめ

遺言書を法務局で保管して貰う方法について見て来ました。遺言書を書くのはいいけど、その保管場所には何かと気を遣いますよね。誰もが簡単に手にできる場所というわけにもいかないですし、紛失してしまうような場所でも困ります。そんな時、法務局で保管してもらっておけば心強いですよね。

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この記事の著者

  • 安田 篤史

    司法書士

    安田 篤史

    こんにちは、ひかり司法書士法人東京オフィスの安田篤史です。
    司法書士といっても一体何を相談してよいのか分からないという方も多いのではないでしょうか?
    ちょっと解決したい問題があるけれども誰に相談していいのかわからなそんな方は一度、司法書士に相談に来て下さい。
    ひかり司法書士法人は、相続・遺言相談、遺言書作成、成年後見業務を始め、不動産の登記名義の変更や会社設立などの商業登記、その他訴訟業務など幅広く業務を行っております。 これら以外にも、ひかりアドバイザーグループのメンバーとして税理士、公認会計士、行政書士、社会保険労務士などの他士業の専門家とともにワンストップサービスを目指しており、また、弁護士、土地家屋調査士や不動産鑑定士などの各専門家とも連携して業務を行っております。
    士業同士の業務の境目とは曖昧なもので、一般の方からみれば誰に頼めばいいのかわからないということも多々あるかと思います。そんな時でも、当事務所へご相談に来て頂き、それが問題解決の糸口となれればと考えております。 これからも、地域に密着し皆様のお役に立てる、そんな司法書士を目指してより良い法律サービスを提供することが出来るよう日々精進して参りたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
    当事務所HPhttps://hikari-sihoushosi.com/

    こんにちは、ひかり司法書士法人東京オフィスの安田篤史です。
    司法書士といっても一体何を相談してよいのか分からないという方も多いのではないでしょうか?
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