相続
不動産の活用・相続
土地の贈与にまつわる税金について
そもそも土地の贈与とは?
贈与とは簡単に言いますと、AさんがBさんに無償で何かをあげる、という契約です。一部の贈与を除き、死亡を伴わないことで相続とは異なり、代金を伴わないことで売買と異なります。それではお金のように手渡すことのできない土地はどのように贈与するのでしょうか?
土地は法務局に所有者が登記されており、その名義を書き換えることで贈与を行うことになります。
贈与にかかる税金は?
それでは土地を贈与した場合、どのような税金がかかるでしょうか?真っ先に浮かぶのは贈与税。通常の贈与のケースで、年間110万円を超えた贈与をした場合、土地をもらった人に対して贈与税がかかります。逆に言えば、年間110万円を超えなければ贈与税はかかりません。例えば1,000万円の評価額の土地のうち、1/10を贈与する場合、1,000万円×1/10≦110万円なので、贈与税は生じないことになります。このパターンだと10年かければ贈与税を支払うことなく土地を贈与できることになります。
土地の評価方法
前段では1,000万円の評価額の土地を例として使いましたが、そもそも土地はどのように評価するのでしょうか?お金と違って土地には金額が記載されていませんし、その土地への利害関係の度合いによっていくつもの価値が存在します。それでは課税という平等を要求されるベースにはなり得ないので、贈与税を計算する場合の土地の評価は「相続税評価額」を使うことになっており、特殊なものを除き、以下の2つの方法が定められています。
①路線価方式
路線価×その土地の面積×補正=相続税評価額
路線価とは、ある土地が接道する道路につけられた1㎡当たりの価格のことで、国税庁のホームページで確認することができます。またその土地の形状や大きさ、周辺環境、賃貸の有無などにより土地の価値は異なりますので、補正をしていくことになります。
②倍率方式
固定資産税評価額×倍率=相続税評価額
路線価が定められていない地域や地目の場合、この倍率方式を使うことになります。この倍率も国税庁のホームページで確認することができます。
土地の贈与税の計算方法
土地の贈与を受けた場合に、もらった人が支払うことになる贈与税はどのように計算するのでしょうか?前述の土地評価額(相続税評価額)をベースにして、以下のように計算します。
{土地の評価額(相続税評価額)-110万円}×税率-控除額=贈与税
「税率-控除額」の部分につきましては、「誰からもらったか?」によって以下のようになっています。
①祖父母や父母などから、その年1/1現在で20歳以上の子や孫への贈与
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | – |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1,000万円以下 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
②①以外の贈与
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | – |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
贈与税なしに土地を贈与できるケース
前述の土地の贈与税の計算方法をご覧いただいて分かる通り、贈与税はなかなか税率が高い税金となっています。これは贈与税が、相続税を補完するもの、平たく言えば生前贈与を繰り返すことでなされる相続税逃れを防止することを目的にする、という性質によります。
一方で政策的な配慮などから、土地を贈与しても贈与税がかからない方法もあります。どのようなパターンがあるかご紹介いたします。
①贈与税の配偶者控除の活用
夫婦間での以下の条件を満たす土地の贈与の場合、配偶者控除2,000万円+基礎控除110万円=2,110万円まで贈与税がかかりません。ただしこの特例は一生に1回しか使えないので注意しましょう。
・贈与する土地は居住用の(居住している)土地であること
・その夫婦の婚姻期間が贈与時点で20年を超えていること
・贈与を受けた年の翌年3/15までその居住用土地に住んでおり、かつその後も住む見込みであること
・贈与を受けた年の翌年3/15までに贈与税の申告をすること
②相続時精算課税制度の活用
60歳以上の父母又は祖父母から、20歳以上の子又は孫に対してなされた贈与について、2,500万円相当まで贈与税を課さない制度です。この制度を使う場合には、相続時精算課税制度選択届出書と贈与税の申告書を、その贈与のあった年の翌年3/15までにセットで提出する必要があります。
ここまでですとメリットしかないような気がしますが、非常に大切な注意点が2点あります。
・相続時精算課税を選択した祖父母や父母からの贈与については、基礎控除110万円が生涯使えなくなる
・この場合の贈与は文字通り、相続時に精算される(贈与の時の価額で相続時に相続財産に加算されて相続税が課される)ので、相続税対策にはあまりならない
この2つのデメリットが非常に大きいので、メリットが出るケースは、①贈与を受けた土地を子や孫が活用して利益を得るケースや、②相続時に精算されてもそもそも大きな相続税がかからないケース、などに限定されるかもしれません。選択に当たっては事前に専門家に相談するようにしましょう。
土地を贈与する場合の落とし穴
土地を贈与する場合に、誰しも贈与税を気にするのですが、土地を贈与するには贈与税以外にもコストがかかります。これを非常に忘れがちですので注意しましょう。「土地を贈与する」ということは「相続まで待つ」との比較の上で実行することが多いと思います。土地の所有権を移転するうえで、贈与と相続ではかかるコストが異なりますので比較してみましょう。
①登録免許税
土地の所有権を移転するため、法務局に納付する税金で、「土地の固定資産税評価額×税率」で計算します。
方法 | 税率 |
贈与の場合 | 20/1000 |
相続の場合 | 4/1000 |
②不動産取得税
土地の贈与を受けた場合に、贈与を受けた人に係る税金で、「固定資産税評価額×1/2(令和3年3月31日まで)×税率」で計算します。
方法 | 税率 |
贈与の場合 | 3/100(非住宅の場合4/100) |
相続の場合 | 非課税 |
上記の通り、贈与の場合と相続の場合で名義の移転時に発生するコストがかなり異なりますので、これらのコストを含めてメリットがあるかどうかを検証の上、贈与の実行をするようにしましょう。
まとめ
これまで見ていただいて分かる通り、土地の贈与は相続と密接な関係があり、相続税対策の一環として検討する方も多いかと思います。そうであればその土地の贈与をするメリットがあるかどうかは、相続税の試算をしてみなければ判断できません。必ず専門家に相談して、相続税だけでなく、贈与時に発生するコストも踏まえたうえで贈与の実行を検討するようにしましょう。
この記事の著者
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税理士
行政書士
内海佑太
神奈川県出身。早稲田大学卒業後、会計事務所での勤務を経て、当事務所に入所しました。
当事務所では「世田谷相続サポートセンター」を設立し、地域の皆様の相続手続きの窓口として活動をしています。
生前相続、相続手続き、相続税の申告をしっかりとサポートします。
神奈川県出身。早稲田大学卒業後、会計事務所での勤務を経て、当事務所に入所しました。
当事務所では「世田谷相続サポートセンター」を設立し、地域の皆様の相続手続きの窓口として活動をしています。
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