相続

相続登記

相続法の改正と相続登記

相続法の改正と相続登記

相続法大改正の概要

2018年7月に約40年ぶりの相続法大改正の法律が設立しました。改正箇所は多岐に及びますが、特に重要な改正点は下記のとおりです。

  1. 配偶者居住権の創設
  2. 婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与等に関する優遇措置
  3. 預貯金の払戻し制度の創設
  4. 自筆証書遺言の方式緩和
  5. 法務局における自筆証書遺言の保管
  6. 遺留分制度の見直し
  7. 特別の寄与の制度の創設
  8. 相続の効力に関する見直し

どの改正もとても重要ですが、今回は我々司法書士にとっても深い関係がある⑧相続の効力に関する見直しについて詳しくご説明いたします。

相続の効力とは

相続の効力と聞いてもいまいちピンと来ない方が多いと思います。ここでいう相続の効力とは簡単に言うと「相続人の権利」です。つまり、相続の効力を強く認めれば、それだけ相続人の権利の保護につながることとなります。具体例で説明しましょう。

夫A、妻B、子C、子Dの4人家族で夫Aが亡くなったケースで考えます。
被相続人Aの相続人はB、C、Dとなり、法定相続分はBが2分の1、C、Dが4分の1ずつとなります。Aの相続財産は現金2,000万円と自宅です。

Aは、生前遺言を残しており、「自宅はBに相続させ、現金2,000万円はCとDが1,000万ずつ相続する」という内容でした。しかし、Bはこの遺言があることで安心し自宅をB名義に相続登記することなく、放置していました。

しばらくして、Bが相続登記をしていないことを知ったCは、何もしらない第三者Eに対して「父名義になっている自宅は私が単独相続することになったので、あなたに売りたい。ただ、遺産分割協議書に全員の押印をするのに時間がかかるので、ひとまず私の持分だけ買ってくれないか?」と持ち掛け、Eは承諾しました。

意外と知られていませんが、法定相続分で相続登記をすることは、相続人1人でもできるのです。CはB、Dに黙って法定相続分で相続登記を完了させ、自分の相続持分の4分の1だけEに売却してしまいました。

このようなケースでも、改正前の相続法であれば、Bは登記をしていなくてもEに対して所有権を対抗すること(Bが所有者であることを主張すること)ができました。つまり、Eから所有権を取り戻すことができたのです。まさにこれが、「相続の効力」です。

相続の効力の何が変わったのか

上記のようなケースの場合、Eは非常に不利な状況になります。Bに所有権を取り戻され、Cから売買代金を返してもらおうにも、Cに連絡がつかない、もしくは連絡がついたとしてもCに財産がなければ、売買代金を回収することは事実上不可能となります。

このように、Eには何も落ち度がないのに、Eに不利な状況になってしまうのはバランスが悪いという配慮から、今回の改正で、Bに相続させるという遺言があっても、Bは相続登記を完了させていなければ、自分の相続分を超える部分(今回のケースでいうと2分の1)については、Eから所有権を取り戻すことができないルールに変わったのです。つまり、上記のケースではBは所有権を取り戻すことはできなくなるわけです。このようなルールにすることにより、Bが相続登記を完了させていれば、EはCが単独相続していないことを登記を確認することにより気付けますし、Bが相続登記を完了させていなければ、速やかに相続登記を申請しなかったBに落ち度がありますので、Eの権利を認めてもバランスがとれることになるのです。

登記の重要性

上記のケースのように、相続人の一部の人が悪意をもって他の相続人の権利を阻害する行為をするケースは稀かもしれませんが、例えば相続人の中に多重債務者の人がいるような場合には、債権者が債権者代位権を行使して、法定相続分による相続登記を完了させ、債務者である相続人の持分に差押をいれるケースも考えられますし、共有持分を積極的に購入して、他の共有者から廉価な金額で持分を購入する業者が登場するケースなど、相続人の権利が脅かされるケースは多く考えられます。また、今回の改正がこのような状況を多発させる要因になることも想像に難しくありません。遺言は故人の最後の遺志を表したものであり、その遺志を完遂できなくなることはご遺族も望まれていないことだと思います。

 また、今回の法改正が行われる前から、遺産分割協議によって相続財産の分割方法を決めた場合にはこのルールが適用されることになっていました。遺産分割協議を行う場合には、遺言がある場合よりも相続人間で協議をする必要性があるため、手続きに時間がかかりますので、よりリスクが高まるといえます。

今後、上記のケースのような事態を招くことなく、安全に相続手続きを完結させるためには、何よりも「急いで登記をする」ということが重要です。登記をすることによって、遺言による故人の遺志や、相続人の権利を保護することができるのです。

登記の世界は基本的に「早い者勝ち」の世界です。何よりもスピードが求められるのです。そのためにも、相続が発生したら、可能な限り速やかに遺産分割協議を行い、もしくは遺言の執行を行うことが肝心です。そして、スピーディかつ正確に手続きを進めるなら、我々のような専門家にご相談することをお勧めいたします。

従来は「相続登記にはリミットがない」といった理由で、時間をかけて一般の相続人の方が全て手続きを行っているケースもありましたが、相続の手続きは戸籍集めから始まり、相続人の確定、遺産分割協議書の作成、遺言の確認、相続登記申請書の作成、申請書の作成に伴う税金の計算等々、なじみのない手続きが多くあり、どうしても経験がない人ですと時間がかかってしまいます。そして、相続手続きに時間がかかればかかるほどリスクが高まってしまうことは、ここまでで説明してきたとおりです。

司法書士であれば戸籍集め、遺産分割協議書の作成など、一般的な相続手続きはもちろん、相続登記まで含めて一括してお任せいただくことができます。まとめて手続きをすることによってスピーディな対応も可能となるのです。相続のことでお困りなら、いつでもお気軽にお声がけください。

 

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この記事の著者

  • 重光 卓彌

    司法書士

    重光 卓彌

    創設 2013年5月に個人事業主として独立開業する。
    屋号をPEAKS TOKYO OFFICEと定め、
    東京都港区海岸1-14-17ベイサイド竹芝1409に事務所を置く。
    法人設立 2017年3月6日に司法書士法人PEAKS TOKYO OFFICEを設立。

    当事務所HP https://www.peaks-sv.com/

    創設 2013年5月に個人事業主として独立開業する。
    屋号をPEAKS TOKYO OFFICEと定め、
    東京都港区海岸1-14-17ベイサイド竹芝1409に事務所を置く。
    法人設立 2017年3月6日に司法書士法人PEAKS TOKYO OFFICEを設立。

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